「LAST」
石田衣良

体がそれを欲しているのに、頭ではそれを欲していない。してしまったあとに激しい自己嫌悪に襲われてしまって冷たくしてしまう。To do or not to do. kbbです。おはようございます。
「LAST」読み終わりました。はじめての石田衣良でした。今作の内容はともかく、この人の文章いいですねぇ。すごく好きだな。よく行く東中野の串焼き屋さんのアルバイトの女の子と本の話しになって、その子が今読んでいる本って教えてくれたのがこの「LAST」だった。そのときは軽い気持ちで、彼女と話しを合わせるためだけに今度読んでみるよって答えてた。その後、フジテレビの朝の情報番組、めざまし天気でやってる川柳の審査委員長らしく、年間だか月間最優秀川柳について話しているのを見た。話し方がすごくたんたんとしていて、落ち着いて話す人でいつまでも彼の語りを聞いていたいななんてそのときは思ってみていた。その時に選ばれた句が
「牡蛎食えば 金がなくなる 忘年会」
ってやつだった。彼の話し方と彼の選んだ、彼の琴線に触れた句のギャップがおもしろくてなんとなく覚えている。
「LAST」は人々の欲望の末にどうしようもなく行き詰まってしまった人間達のLASTを描いた7つの短編を収めた作品集。それぞれ、「LAST CALL」「LAST JOB」「LAST DRAW」のように彼らのLASTについて描かれている。帯には「もう、あとがない!でも明けない夜はない。」なんて書いてあるけど、ちゃんと逆転できたのは7つのうちいくつかしか無かった気がする。目をそむけたくなってしまうような描写が多くて、文章がうまいだけに何度も本を置いてしまった。でも、先を読みたくなってしまう。そんな本だった。
この本に描かれている人たちと、自分を隔てている境界はどこなんだろ。なんだか向こう側に今すぐにでも転げおちてもおかしくないような気がした。借金で首がまわらなくなって、家族を売るか自分を捨てるか選択を迫られる人。職をなくして上野の公園にたどり着く人。新橋の駅前で将来に展望もなく金融会社の看板持ちとなって飼い殺される人。歌舞伎町のサンドウィッチマン達はみんなこんな感じなのかしら。いつ自分がこの人たちと同じようになるんだろって考え込んでしまった。
どの短編もおもしろかったけど、「ラストジョブ」と「ラストコール」は特におもしろかったな。「ラストジョブ」は娘が一人いる32歳の主婦が住宅ローンで首がまわらなくなって援助交際を始める話。「ラストコール」は仕事に疲れたサラリーマンが営業の合間にテレクラに行き、そこで出会った女の子の話。そういえば「ラストコール」だけ主人公以外の人のラストが描かれているのね。
両方とも女性の性を金で買う男の話だ。「ラストジョブ」で主人公真弓を抱いた後の男は彼女に対して恋人であるかのように振る舞う。そこに恋愛感情はあるのかしら。金で性を買うことに対する嫌悪感はまったく感じられない。この作品の彼には事情があって、それは納得できるものなのだけれど。自分は絶対彼のようには振る舞えないだろうな。
吉祥寺の行きつけのbarで常連さんと話したことを思い出した。どんな流れでそんな話しになったのか覚えていないけれどきっと彼のそのときの最大の関心事が若い恋人だか浮気相手のことだったのだろう。どうせウソなら最後まで恋人のように接してあげなきゃねって彼は言った。それがずっと心の片隅に引っかかっていた。そんな時自分にはできないな、そんな風には接せられないと思う。だったらしなければいいのに、頭が拒否しているのに体がそれを欲してしまう。で、激しい自己嫌悪。
テレクラといえばもう10年以上前。はじめて女の子とデートして、はじめて告白して、はじめて振られた夜。バイト先の女友達と飲みに行って慰められて、そのあとバイトが終わった男友達と合流して吉祥寺でさんざん飲んだ後にその女友達が帰った後で、テレクラ行くぞ!って連れられて行った。派手なピンクのネオンとはじめて踏み入れる風俗店に興奮して浮ついた足取りだったはず。まだ16だった僕は身分証の提示を求められてそんなものないって言ったら、じゃあお引き取りくださいって言われちゃった。嫌いだけど興味がないわけじゃなかったから一度行ってみたかったのだけれど残念だったなぁ。
まぁなにはともあれ、この本は楽しめました。あとがきを読む限りでは
「4TEEN フォーティーン」は描かれているものは違うようなので、次にでも読んでみようと思う。でも
「池袋ウエストゲートパーク」はドラマを見る限りおもしろくなさそうだな。同じ作者なのが驚きなぐらいだ。
posted by kbb at 06:11
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