本のタイトルは過去記事またはアマゾンへ飛びます。出版社等の確認にどうぞ。

2009年01月31日

ハードボイルドで行こう-火浦功

「ハードボイルドで行こう」 火浦功

画像はないけどアマゾンに飛ぶよこんにちは。

こんな世の中だから
「ハードでなくては生きていけない。優しくなければ生きる資格がない」
って感じでハードボイルドに生きていこうと思うのですけど、ハードボイルドになれるほどかっこよくない僕の場合は荻原浩の「ハードボイルド・エッグ」の「私」や火浦功の「ハードボイルドで行こう」の辰吉のように周りに笑われるだけになっちゃうかもしれないですね。周りを笑わせているのならそれはそれでまぁいいんでしょうけどねぇ。笑われるのは性に合わないですからねぇ。

さて、そんなわけで初めて読む作家火浦功の「ハードボイルドで行こう」です。伯父にもらった本の中に入っていた物です。子供の頃からその伯父のことは怖いだけで嫌いな人だったのですけど、全然交流のなかったその人が最近うちによくくるようになりました。やっぱり年をとると自分が育った家、土地が懐かしくなるのでしょうかね。

連作短編集というのでしょうかね。下北沢に引っ越してきた探偵社所長の辰吉、所員の銀次、そして銀次が六本木でスカウトしてきたスタイル抜群の絵里。銀次が探偵社の将来を考えて行う事はなにもかもうまくいかない。広告をだした下北沢のタウン誌は異次元のもの。お客さんも異次元からやってくる者ばかり。顔にモザイクのかかったお客さんや、殺されたばかりの銀次のお父さんやらなんやら。

かっこよく生きようとしている辰吉のそばに銀次がいるだけでどこかコミカルに見えてしまう。損な性格というか人生ですね。銀次は探偵なんてやっていなくてもお笑い芸人になれば、笑いの神が降りてきた、なんて言われそうですけどね。

内田春菊がイラストを描いているのですけど、絵里の胸がいやに強調されて書かれていて、ドキドキものでした。ハイレグの水着を着ているイラストもあるのですけど、今時そんな水着売っていないぞ、って感じで時代を感じさせてもらえるものでしたけどね。25年ぐらい前の作品ですからしょうがないですね。

って今これを書いていて思ったのですけど、昭和ってもう二十年以上前なんですね。びっくりでした。僕の小学生時代もそんな昔って事なんですねぇ。いやになっちゃいますね。

荻原浩の「ハードボイルド・エッグ」や今回の作品のようなものばっかり読んでいるのでハードボイルっていうジャンルはコメディかって思っちゃいますね。マーロウファンには怒られちゃうかもしれないですね。



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羊男のクリスマス-村上春樹 佐々木マキ

「羊男のクリスマス」 村上春樹

羊男のクリスマスこんにちは。

ともすれば、一人の時につい落ち込んでしまうけど、そんなときはほのぼのとした本を読みたいですね。前に飲んだ友達と村上春樹のことで盛り上がったときに教えてもらった作品です。佐々木マキとの絵本のような作品。そう「ふしぎな図書館」と同じようなコンセプトで作られた作品です。前回は騙されているので、今回は慎重にネットで調べて、書き下ろしってことを確認の上、読んだことはないと確信した上で買ってきました。

イラストが佐々木マキなので、あの羊男がそのまんまです。ドーナツを毎日食べている羊男。どこか抜けていて、だけどすっごい素直で、というかお人好し。そんな羊男が主人公。
ある年のクリスマス。聖羊上人様をお慰めするための曲を作曲することになりました。ところがこの羊男。呪われていたのです。聖羊上人様が穴に落ちて亡くなったクリスマスに穴のある食べ物、ドーナツを食べてしまったから。
作曲は遅々として進まず、じゃまばかりが入る。そしてとうとうクリスマスの四日前に呪いを解く方法を羊博士に教えてもらい呪いを解く旅に出る。穴のあいていない食べ物、ねじりドーナツを持って。

そこから双子の姉妹がでてきたり、海ガラスがでてきたりと大冒険が始まるわけですけど、最後は大団円。まさにクリスマスの日に読むような、子供にプレゼントするような物語になっています。
といっても、村上春樹の初期三部作を読んでいる人にはもっと親しみをもって楽しめる作品になっていますけどね。まぁ村上春樹ファンの為に書かれた作品といってもいいのかもしれませんけどね。双子がでてくる必然性はまったくないのですから。

村上春樹作品への入り口、試金石としてちょうどよいのかもしれませんけどね。短い文章だし、わかりやすい内容ですしね。まぁこの物語よりもっと深いところが村上春樹の良さなんですけどね。

なんだか久しぶりに初期三部作を最初から読みたくなってきました。今読んでいるのが終わったら読み直してみようかしら。




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2009年01月30日

黄色い目の魚-佐藤多佳子

「黄色い目の魚」 佐藤多佳子

黄色い目の魚こんばんは。

今日は豪華二本立てです。

最近の日本の女子テニス勢は大活躍ですね。杉山愛は惜しくも敗れましたけどダブルスで決勝に行きましたし、なんといっても伊達公子でしょう。13年ぶりに四大大会ってどんだけスーパーウーマンなんでしょうかね。年をとると人間の体力は衰えるっていう常識を一気に覆してしまいましたものね。でも陰ですっごいがんばっているんでしょうね。テニスをやりたい、ただそれだけのために他のことは全て犠牲にする。それだけ打ち込めるものがあるってことは幸せなのかもしれないですね。

さて、「しゃべれどもしゃべれども」の佐藤多佳子の作品、「黄色い目の魚」です。

そうそう「しゃべれどもしゃべれども」の映画をこないだケーブルテレビで観たのですけどイマイチでしたね。原作を無理矢理入れ込もうとしているように感じちゃって。香梨菜が美人さんだってことしか残らなかったなぁ。

さて、気を取り直して「黄色い目の魚」。どうしてか「黄色い魚の目」って覚えちゃって未だに間違えてしまいそうでこわいです。

物語は「やればできる。やらないだけ」の男の子と周囲にとけこめない女の子のお話。男の子、悟は部活でサッカーをやっていても真剣になれない。真剣にやって失敗したら恥ずかしいから。だいたい才能もないのだからできるわけないし。それでも絵を描くことは大好きだ。絵を描いていると没頭して時間を忘れてしまう。
女の子、みのりはうまくまわりと間をとれない。気に入らないことがあるとすぐに絶交してしまう。そんなみのりも高校生になって、なんとか敵を作らないようにしてきたけど、すっごい頼りになる味方がいるわけでもない。
そんな悟とみのりの交流を描いた物語。

僕には絵の才能がまったくないので、逆にこういう絵を描く人の物語は好きなんだよなぁ。美術館とかもなかなか行く機会はないのだけれど、いつでも行く準備はできているんですけどね、心の中では。

やればできる。やらないだけ。なんて言い続けて30年も経っちゃいましたけど、いつはじめるんだろうか、僕は。そろそろ本気にならないと。悟が気づいたように、僕も早く気づかないと。伊達さんにばっかりいいところを持っていかせ続けるのもしゃくですしね。さぁ動きだそう。




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posted by kbb at 22:54 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 小説・エッセイ サ行

殺人!ザ・東京ドーム-岡嶋二人

「殺人!ザ・東京ドーム」 岡嶋二人

殺人!ザ・東京ドームこんばんは。

ご無沙汰です。景気が悪くなってからどんどん人員整理が行われていますね。派遣切りやらなんやら。一週間ぐらい前まではそういうニュースを見ても他人事だったのですけどね。
どうやら僕はリストラされるようです。三月末までに次の仕事を見つけてきてくれって言われちゃいました。まぁ仕事もほぼないような状態だったので、うすうすはやばいんだろうなぁって思っていたのですけどね。自分にそういうことが起こるとは思っていなかったので、結構ショックでしたね。実家暮らしでまだ若いから、って言われましたけど、使えないと思われているから僕に声がかかったのだろうなぁって思ったら悲しくなりましたね。まぁそんなこと言われてまで働きたくねぇよっていう気もちもそのときにわいたので辞めてやるんですけどね。こんな時期に次の仕事なんて見つかるんでしょうかね。仕事がないからリストラするのにねぇ。どこの会社も変わらないはずですよねぇ。

さて、そんなことが合っても電車の中は暇だから本はよみますよー。悲しくなんてナインダカラ!。

岡嶋二人の作品は軽く読めるから息抜きにいいですよね。「殺人!ザ・東京ドーム」です。

仕事もできず、人のせいにばかりして生きてきた若者が主人公の物語です、タイトルの通り東京ドームで殺人を行います。どうして東京ドームかというと、近所の僕に気があるはずのクリーニング屋さんの女の子が野球なんて嫌いって言ってたから。僕がやったって言って喜んでもらうんだ。

とまぁとんだ勘違いから三人もの人が無差別に殺されていきます。しかもどこから飛んでくるのかわからない手製の矢で。その彼の行動と、それを利用して愛人の旦那を殺そうとする男の企みやらなんやらが錯綜してうまくできあがっています。火曜サスペンス劇場なんかで番組にしたらおもしろそうですよ。

さて、就職活動しないとね。社会や人のせいにばかりしていてもお金はどこからもはいってきませんものね。今までと同じように飲みにいくには稼がないとまずいですものね。

負けないんだから!




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posted by kbb at 22:32 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 岡嶋二人

2009年01月24日

女たちは二度遊ぶ-吉田修一

「女たちは二度遊ぶ」 吉田修一

女たちは二度遊ぶこんにちは。

最近ついつい会社帰りに遊び過ぎちゃって更新がおろそかになってしまいました。遊び過ぎちゃうとどうしても生活が乱れてしまいますね。朝起きれなくなったり、ゴミを出し忘れてしまったり。いけないけないと思いつつも次の日も同じ事をしてしまうのはやっぱり自分が駄目だからでしょうね。

さて、吉田修一「女たちは二度遊ぶ」です。

吉田修一の男女を描いた短編集になっています。11人の女が描かれています。タイトルは一つをのぞいて全て「どしゃぶりの女」「公衆電話の女」「夢の女」のように「〜の女」という形でつけられています。

違う形でつけられたタイトルは「最初の妻」。中学生になったばかりの13歳の男女が主人公の物語です。彼がした初めてのデートは同級生のかずみとだった。二人で電車に乗り隣町までいく。バスに乗りラーメンを食べて郊外の住宅地をぶらつく。いつしか一つ一つの住宅に将来自分たちが結婚して住むことを想像してみるゲームがはじまる。あるアパートの前でかずみがここなんてどう?と聞かれた僕は答える。「こんなところで住むぐらいなら死んだ方がましだよ」と。おんぼろすぎるから。そこはかずみが二週間後に母と二人で引っ越してくるアパートだった。

20ページぐらいしかない物語なのですが、心の動き方が悲しいぐらいによく書けているのはさすが吉田修一だからでしょうかね。
他にもいくつも印象深い作品が多かったのですが、全部紹介するわけにもいかないのでこの辺で。その分はずれも多いのは作品の収録数が多いからしょうがないのでしょうね。

今日はもう今年始まってずいぶん経ってしまいましたけど新年会に行って来ます。代々木のネパール料理なんてどんなのか想像できないものを食べてくるのですけど、ネパール料理に合うお酒ってなんなのでしょうかね。そもそもネパールはお酒なんて飲まないのかしら?まぁ楽しみにしておきましょうかね。




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2009年01月18日

八月の路上に捨てる-伊藤たかみ

「八月の路上に捨てる」 伊藤たかみ

八月の路上に捨てるこんばんは。

先日の鴻池官房副長官の女性問題のニュースをネットでみていて不思議に思いました。

官房長官、鴻池副長官に厳重注意 週刊誌報道巡り

 河村建夫官房長官は15日、鴻池祥肇官房副長官が知人の女性に議員宿舎の鍵を渡して宿泊させたとの週刊誌報道について鴻池氏から事情を聴いた。河村長官は記者会見で厳重注意したことを明らかにしたうえで「プライベートな問題だが、政府中枢にいる立場だからモラルが問われる。緊張感を持って公務に当たってほしい」と述べた。

 鴻池氏は記者団に「誠に申し訳なく不徳と思う」と陳謝。ただ「記事は事実と反するところがかなりある。男女の仲は誓ってない」と釈明し、辞任についても「考えていない」と否定した。(1/15日)
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20090116AT3S1501P15012009.html

「男女の仲は誓ってない」という言葉を読んで、ずいぶん古風なやりとりをしてから男女の仲になる人なんだなぁと不思議でした。まぁ68歳の世代の人ならそういう風な手続きを踏んでから男女関係になるのかしらって思っていました。ところが今日テレビで見ていたら、鴻池さんは
「男女の仲は、天地神明に誓ってない」
って言っていたようですね。
「男女の仲は、誓って、ない」

「男女の仲は、誓ってない」
と読み間違えていたようです。日本語って難しいですね。

さて、伊藤たかみ「八月の路上に捨てる」です。芥川賞を取った作品です。

自動販売機のリース会社に勤める水城さんと敦。自動販売機にジュースを補充する仕事をしている二人。そんな二人がトラックで回りながらいつものように自動販売機にジュースを補充していく一日が舞台です。水城さんはその日で配置転換のために、現場に出ることはなくなる。
敦は大学時代につきあい始めて結婚した知恵子と離婚したばかり。水城さんはずいぶん昔に離婚して子供を預けて一人ぐらし。そんな二人が仕事をしながら語り合う。その会話が作品の全てです。

八月の路上に何を捨てたかは本書を読んでいただくとして、敦が知恵子と別れた理由。それはやっぱり二人のコミュニケーションが不足していたから。知恵子は編集者になるという夢を一度諦めて他の会社に就職する。敦は脚本家になる夢を追って今の仕事を始めたがもうその夢は諦めきっている。ある日知恵子が出版社に就職して夢を叶える。彼女が語る仕事先での夢や愚痴。それに居心地の悪い思いをする敦だったけど、知恵子が会社を辞めてしまい、精神的におかしくなってしまうと、二人の関係もだんだん壊れていく。

結局敦が浮気をすることで二人の関係に終止符を打つのだけれど、結婚をするきっかけを離婚届を出すきっかけも二人とも口にだすこともできずにだらだらと先に延ばしてしまう。言うことで決定的な状況を作り出してしまうのが怖かったのかもしれないですね。

僕もいつも決定的な何かを作り出さないように、なるべくそういう言葉を言わないようにしているのですけど、酔っぱらってしまうとそれを忘れてしまってくだらないことをいつまでも言っている時があるんですよね。だから自己嫌悪に陥ってしまうのでしょうけど、だからって決定的な何かを言わないとどこにもいけないのもわかっているんですけどね。難しいですよね。





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2009年01月17日

新婚旅行は命がけ 新婚物語T-新井素子

「新婚旅行は命がけ 新婚物語T」 新井素子

画像はないけどアマゾンに飛ぶよこんにちは。

先日友人からこんな質問をされました。
「近々結婚するの?」
そんな予定も相手もあらず、どうしてそんなこと聞くのだろうかと考えてみたら、一つ思い当たる節が……。
今年の年賀状を送るのに、友人に住所を聞いていたのですけど、一人だけ聞いたのに年賀状を送るのを忘れていた人がいました。こっちは送った物だとばっかりおもっていたので、その質問が唐突でびっくりでした。

さて、新井素子「新婚旅行は命がけ」です。新井素子は以前「本屋でぼくの本を見た」で短い文章を読んだことはあったのですけど、長い文章はこれが初めてです。といっても短編集なんですけどね。

陽子さんと正彦君は新婚でマレーシアに来ています。陽子さんの言うことも聞かずにビーチに寝転がっている正彦君。正彦君の言うことも聞かずにウミヘビをつかもうとした陽子さん。やけどのせいで新婚初夜はベッドでうなっていることしかできなかった正彦君。といったように、うまくいっていないんだか、いっているだかわからない二人です。そんな二人の新婚生活の様子がおもしろおかしく描かれています。

二人で一緒に生活することになって食事の好みや寝相の悪さ、いびきの大きさ、テレビをずっとみていなければならないなどなどお互い見えなかったことがどんどん出てきてそれのすりあわせをしていく過程が丁寧に書かれていて、結婚を夢見る女性が読むと大変役に立つ教科書になるのではないでしょうかね。

ゼクシィのCMに出てくるような女の子に「結婚して」って言われたら今すぐにでも区役所に飛び込んでいくんですけど、なかなかそういう子が現れないのが問題ですよね。なんてこと言っていて周りにいる子が結婚したいと密かに思っていたら怒られちゃうからこの辺でやめておきましょうかね。

そうそう、この作品は「結婚物語」の続編っていうことになっているみたいです。正彦君と陽子さんがつきあうところから結婚に至るまでが描かれているそうなんですけど、こちらの方が僕にとっては役に立つのかしらなんて思っています。




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一人ひとりに未来を創る力がある テラ・ルネッサンス T-西原大多郎 田原実

「一人ひとりに未来を創る力がある テラ・ルネッサンス T」 西原大多郎 田原実

テラ・ルネッサンス Tこんばんは。

今朝起きてテレビを見たら旅客機が墜落、なんてニュースが出ていて一気に目が覚めてしまいました。スーパーで「乗員乗客155人」なんて書いてあって、最後まで読まずに悲惨な事故だなぁなんて思っていたら、その後に「全員無事」って書いてあって死ぬほどうれしかったです。次々と流れる映像の一つに両翼に立って救助を待つ人たちに近づく民間のフェリーがあって、救助される人たちの心細かったところにあんな威風堂々と近づいてくる船を見て安心した気もちを思って一緒に泣いてしまいました。

あの映像のフェリーは大きな星条旗をいっぱいにはためかせて船の上に掲げていましたね。アメリカ人にとって星条旗っていつでもああいう存在なんじゃないかしらって思いました。どこにいても強いアメリカが守ってくれる。そんな風に思わせてくれる。すっごい効果的なシンボルなんだなぁって思いました。

さて、本が好き!様からいただいた、コミック「一人ひとりに未来を創る力がある テラ・ルネッサンス T」です。開いて最初に目に付くのが、出版社のスタッフ一同の「お読みいただきありがとうございます」のメッセージ。こんなのを一冊一冊に挟んでいったら手間もコストもかかるのに、それをしているってことは本当にこの言葉を伝えたいからなんでしょうね。

さて、内容ですが、世界中にいる少年兵の役に少しでも立てるようにNGOを立ち上げた男の話です。鬼丸昌也。それがその男の名前です。テラ・ルネッサンスというNGOの代表です。

人生において大切なのは
「やること」を決意すること

彼の行動は全て決意の上に行われます。そしてその行動力がすばらしい。英語も話せないのに、少年兵の真実を知るために単身イギリスへ飛び、NGOのネットワークに飛び込みます。約束していた通訳ボランティアと会えないと知るや、インターネットで通訳ボランティアを募集してしまう。そしてやっと見つけた通訳とともに、イギリスにあるNGOの本部に乗り込みます。そこで得た情報を日本国内で講演などを通して伝え、寄付などを集めてウガンダに元少年兵の職業訓練施設を作ってしまいます。

そうやって一つ一つの行動が彼がやるときめたその決意から現れてくるのです。彼は今29歳。年齢が全てではないけれど、自分よりも下の人間がここまでやっているのに、自分は何をやっているのだろうかと打ちのめされてしまいました。

僕の友人に大学を卒業して一流企業に就職したけれど、その人生を投げ出して看護大学に入り直したやつがいます。彼は将来発展途上国で病気の予防のために働きたいと一生懸命勉強しているみたいです。10も歳の離れたキャピキャピの女子学生に囲まれながら。

そんなことをして助けたとしても対症療法にしかならないじゃないか、おまえと出会えた少数は助かって、出会えなかった大多数が死んでいくなんて無意味じゃない?って言ったことがあります。

でも、そうやって少数しか助けられないことになったとしても、そういうやつが一人でも多くなれば倍数的に増えていくんですよね。そういう活動をしている人がいればこそ、世界でこういう問題が起こっているんだっていう情報源にもなりますものね。星条旗をはためかせてもアメリカでもどうしようもできない問題が世界で起こっているんですよね。そういうことをみんなで手を取り合って少しずつ、ほんの少しずつかもしれないけど変えていかなければならないのでしょうね。

僕にはそんなことをする勇気も決断力もないけれど、自分の身の回りでできる少しをやっていこう。そういう風に思わせてくれる素晴らしい作品でした。ありがとうございました。



一人ひとりに未来を創る力がある テラ・ルネッサンス 1
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書評/



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2009年01月16日

ほぼ日刊イトイ新聞の本-糸井重里

「ほぼ日刊イトイ新聞の本」 糸井重里

ほぼ日刊イトイ新聞の本こんばんは。

俺ってセクシーだろ?
タクシーの間違いじゃない?

ってどこかのお笑い芸人が言っていましたけど、まさに僕のことでしょうかね。

さて、「言いまつがい」「オトナ語の謎。」のようなコンテンツがあるここならそんなおもしろい言葉がたくさん見つかるのじゃないかしらね。ほぼ日刊イトイ新聞です。

そんなサイトを立ち上げる前から、そしてハイハイも終わり幼児期が終わる頃のほぼ日に糸井重里は何を考えていたのか。そんなことが書かれているのが本書「ほぼ日刊イトイ新聞の本」です。

コピーライターとして、仕事の仕方に行き詰まりを感じた糸井重里がほぼ日を立ち上げるまで。そして出演することになったテレビ番組のおかげで予定よりも早くなったサイト開設日までのドタバタ。

ほぼ日をビジネスとして考えたときの可能性。そんなことがつぶさに書かれています。

埋蔵金発掘なんかをやっている糸井重里をテレビで見ていて、いつもうさんくさい人だなぁ、この人は。なんて思っていたんですけど、この本を読んでみると、彼が何に向かって、何を目的にしてああいう番組に出ているのか。そして何が楽しいと思っているのかがよくわかりますね。

「おいしい生活」

なんて言葉は知っていても、それをつくったのが糸井重里だよなんてピンと来ないのが僕らの年代だと思いますけど、彼はそうやっていくつもの"新しい"言葉を作り、時代の先端を走っていた。そうやって一人走るからこそ、一緒に走る人がいなかったからこそ、ここまで悩んで悩み抜いて、そしてこんなサイトをつくったんでしょうね。

いまや当たり前になりつつある、一般サイトのコンテンツとして広告をする手法。これもほぼ日ができた頃にはなかったですよね。そういう何もないところに新しいものを作る彼のエネルギーがすごいんでしょうね。

そうそうこの本を読んで知ったのですけど、

おちこんだりもしたけれど、わたしは元気です

という魔女の宅急便のキャッチコピー、これも糸井重里が作ったらしいです。どうやってこういう風に人の心に残る言葉を作っていくのでしょうかね。僕もくだらないおしゃべりばかりしていないで、こういう言葉を少しは考えないといけませんねぇ。






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2009年01月11日

しょっぱいドライブ-大道珠貴

「しょっぱいドライブ」 大道珠貴

しょっぱいドライブこんばんは。

いつまで経っても山崎ナオコーラをオナコーラって覚えてしまっていて治りません。どうにかならないのでしょうか。

さて今日の作品ですが、実は手元にありません。読んだその日に飲んだ友人に貸してしまったのです。「人のセックスを笑うな」のようなどっちつかずの物語が好きっていうから、じゃあこれどう思う?って貸してしまったのです。というわけで初めてその作品が手元にない状態での更新です。

まぁ上を読めば「人のセックスを笑うな」と同じようにあまりおもしろいと感じられなかったってことがわかっちゃいますね。「しょっぱいドライブ」大道珠貴です。

表題作他全三編が収録されています。
表題作は34歳のミホが妻子持ちで金持ちのおじいちゃん九十九さんといかに同棲にいたったかが物語。

なんだかはっきりとしないけれど、相手が喜びそうな言葉をつい口に出してしまって、やっぱりいやだなぁなんて思いつつ、結局は自分の言葉に従ってみようって感じなのかしら。この作品を貸した子が「人のセックス〜」のだらだらとした感じがリアルに感じられてよかったっていっていたけど、このだらだらとしたいつまでもうだうだとしている感じがリアルなんでしょうね。

だらだら、ぐらぐらがリアルではないとは決して思いません。でも小説でそういうリアルさを感じなくても、そこらじゅうに転がっているのが、むしろ自分の頭の中に転がっているのがそんなリアルなのだから、そんなのをいちいち時間をかけて小説として読んでもおもしろさを感じられない自分がいます。むしろとんでもない方向から飛んできたボールにとってもリアリティがあったらそれってすんばらしい作品だと思っちゃうのです。

表題作よりもむしろ一緒に収録されていた"タンポポと流星"の方がおもしろかった。
幼なじみ、鞠子と続く不健全な友情から逃れるために東京で就職するミチル。でも東京でした恋愛もやっぱり福岡での友人と似たような関係になっていく。結局ミチルの主体性のなさが焦点なんでしょうけど、幼なじみの鞠子がかわっていったようにミチルも少しずつ変わっていく。そんな物語でした。

後々知ったのだけど、この作者女性なんですね。セックスのシーンがどれも嘘臭くてきっと男性が書いたじゃないかと勘違いしていたました。たいていの男が思い描くセックスって嘘臭くてリアリティがありませんもんね。ってまぁ僕の思い描くセックスもそうなんでしょうけどね。そういったところもこの作品を好きになれなかった理由なんだろうなぁ。



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2009年01月10日

マリモ 酒漬けOL物語-山崎マキコ

「マリモ 酒漬けOL物語」 山崎マキコ

マリモ 酒漬けOL物語こんにちは。

酒好きの僕ですが、周りの女の子には僕につきあって同じようなペースで飲んでくれる人がいなくていつもつまらない思いをしています。

そんな僕と一緒に飲んでくれる酒漬けOLさんはいないかと周りを見回していたところ見つけたのが本書「マリモ 酒漬けOLの日々」です。初見の山崎マキコが作者です。

食品会社で商品企画を行うOLマリモは大酒のみ。飲み過ぎて記憶をなくし同僚の坂上君にいつも迷惑をかけてしまう。ある日上司の命令で自分の企画と90度違った企画の責任者にされてしまい、それの販売不振の責任をとらされ倉庫係に飛ばされる。そんなマリモの心にはいつも高校の時の先生がいる。
人は神ではないのだから、間違いを犯すのです
辛いときにはいつも先生の言葉が心をよぎる。そんなマリモの自分探しの物語です。

マリモが食品会社から有機野菜の販売会社へ転職をします。そこでイヤだと思っている男と二人で北海道へ一週間出張するシーンがあります。最終日、羽田について飲みに行きたくなったマリモは、その男を誘おうとしている自分を見つけて自問自答するシーンがあります。でもこういうことってよくあるんですよね。マリモの場合はすんでのところで止まりましたけど、僕の場合は誘ってしまってしかも飲んでいる最中からつまらない気分になり、そんな自分がさらに嫌いになっていくっていうどうしようもない悪循環に陥っている時があります。さすがに最近は飲みたい人と飲む回数が増えたのでそういう機会もへりましたけどね。

物語の前半。マリモが記憶をなくして、酒をやめようと決意しているにもかかわらずやっぱり飲んでしまう場面が出てくるのですけど、いつもの僕をみているようでびっくりしちゃいました。僕だけじゃなかったんだ、なんて救いのようなものも感じてしまったのにびっくりしています。
こんな日の夜は、ちょっとお酒の助けを借りて、頭の働きを鈍らせるほかない。

まさにこんな感じで飲みにいってさらに後悔を募らせるだけになるんですけどね。

この物語の最後、結局マリモは先生に会いに行きます。そして先生との会話で気づきます。
許されるのだ
私の存在は許されているのだ

これを感じる事って本当に大切なことだと思う。でも僕にはまだまだこれは感じることはできない。マリモは先生という人間と出会い、いろんな出来事を通してこれを感じることができたけど、僕にはまだ感じられない。きっとそんな機会はそこらじゅうにこらがっているのだろうけどね。

先日飲みに行ってきたのです。そのときに「今年の目標は飲み過ぎず、飲んでも声が大きくならないような大人の飲み方のできる人間になる」っていいながら結局最後は記憶が曖昧になってしまうような飲み方になってしまいました。こんなんじゃお酒好きのOLさんと仲良くなれないですね。まいったなぁ。




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2009年01月08日

天下り酒場-原宏一

「天下り酒場」 原宏一

天下り酒場こんばんは。

電車の中で「言いまつがい」を読むOLを見つけました。。
いつクスっとやるかちらちらと観察してしまいました。やな趣味ですよねー。クスリともせずつまらなさそうに読んでいたのがちょっとショックだったんですけどねぇ。

同じようにいやな目でまわりを観察しているからこういう作品をかけたんじゃないでしょうか。「天下り酒場」、原宏一です。

以前読んだ「床下仙人」が思ったよりもよかったんですけどなかなか手に取る機会がありませんでしたが、本屋でみつけて速攻レジにもっていっちゃいました。いやぁ想像以上によかったです。

役人の天下り先がなくなったのでおまえのところで雇ってやってくれないかと言われる割烹居酒屋の店主。元役人を雇ってみると思ったよりも使える。ってところから始まる"天下り酒場"。

テレビの配線のところに盗聴機を見つけた主人。誰が盗聴しているかもしれず弱みを見せないように、冷え切っていた妻とも仲良くやっているように演技する。思ってもいない理由で家族との関係が変わっていく"居間の盗聴器"。

おばあちゃんが肉離れを起こしたある日玄関先に現れたのはボランティア。主婦の私の仕事がどんどんボランティアの女性に取られていく。ある日主人の夜のお供までしているようになっていた。そんな風に家族が崩壊していく恐怖を描いた"ボランティア降臨"。

就活中の僕が面接に行こうと支度をしていると、玄関先に現れたのは歯を磨かせてくれと言うおじさん。しつこいからやってもらうとすっごい気持ちいい。おじさんは倒産してしまって失業していた歯医者だった。あらたなビジネスチャンスと就活もそっちのけでおじさんの歯磨きデリバリーサービスを手伝うことになった"ブラッシング・エクスプレス"。

などなど全6編が収録されています。一つもはずれがない短編集というのも珍しいのではないでしょうかね。

特にこのご時世。"ブラッシング・エクスプレス"の主人公の男のバイタリティというか、行動力、積極性は僕にはまったくないものなので、見習いたいものでした。

解説に原宏一の作品がどれも絶品になっていると書かれていたのですけど、amazonで調べてみたら結構復刊しているものが多くて、今後が楽しみです。



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2009年01月05日

温室デイズ-瀬尾まいこ

「温室デイズ」 瀬尾まいこ

温室デイズこんばんは。
まずいです。全然眠れません。不規則な生活を正月にしてしまったからでしょうかね。明日から仕事だっていうのにねぇ。どうしましょ・・・。

まぁ気分転換にブログでも書きますかね。
先日ケーブルテレビでハリウッド版「ゴジラ」を見たんですけど、あまりにもジュラシックパーク化されたゴジラを見せられてしまった気になりました。しかもアメリカ人からいじめられているかのように執拗にヘリコプターで追いかけ回されるゴジラを見ながら、そんなんでゴジラが負けるわけがない!日本人魂を見せてやれ!などとちょっと間違った方向から応援していました。最後にミサイル12発を浴びせられてそれでもまだ我が子を想うゴジラを見て少し涙ぐんでしまったのは同胞のように感じてしまったからでしょうかね。

さて、瀬尾まいこ「温室デイズ」です。瀬尾まいこ、いい!と言っていたのにしばらく遠ざかっていました。瀬尾さん、ごめんなさい。でも大好きですよ。

さて中学生のいじめを題材に、現役(だと思っているのですけどまだやってらっしゃるのかしら。)国語教師の瀬尾まいこが書いたのが本作です。教師の立場からいじめが描かれているような気がします。

小学校の教室ではいじめの加害者の立場にいたみちる。中学三年生の二学期になり、崩壊していく学校に抵抗しようとしたホームルーム時の教師への発言が自分が被害者となる引き金となってしまった。簡単に終わると思っていたいじめがだんだんと陰湿化し、それでも耐えるみちる。スクールサポーターの吉川は役に立たないし、頼りがいのあった担任は見て見ぬ振りをする。厳格な父にも相談できないみちるだったけど、卒業奉仕の一環で修繕することになった中庭をめぐってみんながみんなの立場でどうにかしようとしていることを知る。

こんなあらすじなわけですが、やっぱり教師の立場で書かれたからなのか、最後にはどうにかなるよ、的な結末になっているような気がしました。最後の伊佐君の行動もいまいち理解できませんでしたしね。悪いやつはとことん悪いってことなのでしょうかね。

でもいじめってどうにもならないんですよね。結局人間関係がうまくいかなかったってことなのだから、それをどうにかしようとしても無駄な気がする。ならばいっそのこと全然違う関係のところで始める方が損失も少なくていい気がするのは僕だけなのでしょうか。

本作でもみちるの友人、優子が学内で別室登校したり学外のフリースクールに通ったりカウンセラーに行くシーンがあるのですけど、それもどこか否定的に書かれていたりします。やっぱり学校が一番だ、というふうに読めてしまったのは、瀬尾まいこが教師だって知っているからでしょうかね。

高校生にもなれば、学校を辞めて大検をとったりと、自分で関係を変えることはできるのかもしれないですけど、小学校中学校では子供自身でそういった関係を変えることが難しい。それが一番の問題なのかもしれないですね。学内にも学外にもそういった逃げ場はあるけど、そこに逃げ込めないようにしているのも大人なのかもしれないですよね。でも、悪者のゴジラでさえ僕みたいに助けてあげたいと思ってしまうんですから、悪者ですらないいじめられてしまう人にだって味方はそこらじゅうにいると信じたい。その味方が手を差し伸べてあげられるか。その手に気付けるか。そこが難しいところなのかもしれないですね。

優子がカウンセリングで覚えたカウンセリングマインドを下地にしてクラスの不良で優子に以前告白したことのある伊佐君と会話をするシーンがありました。
この会話がすっごい心地いい。強引に相手の懐に飛び込まない。相手の言うことは否定しない。ちゃんと聞いているよってことを態度で示す。カウンセリングに限らずこうやって会話を聞いてもらえたら誰だって気持ちよく話ができるような気がする。文章を読んでいるだけで、聞いているだけで第三者が心地よくなるんだもの。すごいですよね。
こういう会話を目標にしてみたいな。そんな風に思ってしまいました。普段の自分の会話がこれの正反対なんですもの(涙)。




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posted by kbb at 04:10 | 東京 ☀ | Comment(4) | TrackBack(2) | 瀬尾まいこ

2009年01月03日

オテル モル-栗田有紀

「オテル モル」 栗田有起

オテル モルこんにちは。
もう正月三が日も終わりですね。なんだかんだでだらだらと過ごしています。正月休みも明日で終わりだなんて、寂しいですね。こうやって毎日毎日どんどん過ぎていくんですね。って年末にも同じような反省をしていたのはきっと気のせいではないでしょう。

さて食っちゃ寝、食っちゃ寝を繰り返してどんどん時が過ぎていくわけですけど、それの理由の一つがこの栗田有起の作品、「オテル モル」なんです!読んでいるとページを繰る指がだんだんと止まっていき、まぶたがだんだんと下がっていってしまう。この本の魔力は怖いです。といっても、つまらなくてそういう現象が起こるわけではなくて、この作品の世界の心地よさに睡魔がおそってくるのです。

「悪夢は悪魔だ」
を合い言葉にいらっしゃったお客様に最高の眠りを提供するオテル、
「オテル・ド・モル・ドルモン・ビアン」
「ぐっすりもぐらホテル」ぐらいの訳がつけられるこのホテル。都心の高層ビルの間の細い道を入った奥の地下にあるホテル。地下13階建てのこのオテルでは日没から日の出まで最高の眠りを手に入れるべく様々なお客様が集まってくる。
そんなオテルに就職した希里。双子の妹、沙衣は覚醒剤に溺れてリハビリ施設に入院中だ。両親は沙衣につきっきりで彼女の世話をしている。希里は沙衣の旦那と沙衣と旦那の子供、美亜と三人暮らしだ。
沙衣の旦那は希里の高校の時の彼氏。そんな複雑な家庭で過ごしている希里と沙衣は陰と陽のような存在だ。希里は誘眠顔のおかげでオテルに就職が決まったが、沙衣は覚醒顔をしている。そしてそんな沙衣にもやっぱり必要なのは安らかな眠りだった。

こんな風に物語がすすんでいくのですけど、物語を先に進みたいのに、睡魔がおそってきて二時間ぐらいの睡眠を繰り返してしまう。えてして、そういうときは夢にうなされることが多いのに、この時は心地よい夢だったみたいだ。といっても見た夢の内容なんてなんにも覚えていないから素敵な初夢を見ることができたのかわからないのですけど。

このオテルには客室係兼経営者の外山さんがいる。ビロードのカーテンには「ビロード」と書かれたプレートを、マホガニーの机には「マホガニー」のプレートをつける。そうやってきちんときちんと物事をしていかないと気が済まない。けれど、客商売の一番重要なことは「臨機応変」だってことも知っている。こういうきちんとした人が社会を回しているんでしょうね、きっと。こういう人のおかげで僕みたいな怠惰な人間がぐっすりと眠っていても世間は動いていくのでしょう。まぁそんな簡単にはかわれないのだから、少しずつ外山さんのようになろう、そう思う正月三日でした。

それにしても「コイノカオリ」に収録されていた"泣きっ面にハニー"で一気に好きになってしまった栗田有紀でしたが、間違っていませんでしたね。新年早々こんな素敵な出会いがあるなんて、今年はいい年が過ごせそうな予感がします。よかった。よかった。



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posted by kbb at 17:28 | 東京 ☀ | Comment(4) | TrackBack(1) | 小説・エッセイ カ行

2009年01月01日

もうひとつの恋-俵万智 浅井慎平

「もうひとつの恋」 俵万智 浅井慎平

もうひとつの恋あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくおねがいいたします。

今日はいい天気ですね。初日の出もきれいに見えたことでしょうね。

といっている僕は、昨日の23時に眠りに落ちてしまって年始から早寝早起きを達成しました!ってどんだけポジティブかよって感じですね。カウントダウンも初日の出も初詣も初夢もまだなんにもしていませんが、今年の健康が予感させられる元旦です。ってお酒飲みながらこんなこと言っても説得力がありませんよね。

さて、新年早々一発目の読書は「もうひとつの恋」です。俵万智の短歌と浅井慎平の写真がきれいに合わさっている作品集になっています。

まずは俵万智の短歌をじっくりと読んで、一度本を閉じて短歌をゆっくり味わって、もう一度開いて浅井慎平の写真を眺める。なんて贅沢な本なんでしょうかね。

写真をここに載せるわけにいかないので、気に入った短歌をいくつか。

連絡のとれないことが 寂しくて たいした用などないのだけれど
何もかも<ごっこ>で終わってゆく恋の さよならごっこの ほんとの部分
「それだけです」と 書いた手紙の余白には それだけでない心がにじむ
不機嫌の理由が見えない 君のそば 明るいだけがとりえの私

恋をテーマにしたページに連載されていたそうで、どれもこれも恋がテーマになっています。
つきあっただの、別れただの、人と人が出会って別れる、ただそれだけのはずなのに人間の心がここまで動くのってやっぱり恋ってすごいことなんでしょうね。

ありがとうなんて言うのも今さらのような気がするけどありがとう

っていう俵万智の歌を心に秘めて今年は「ありがとう」って言葉を忘れないようにいこう。そう思う一月一日でした。
みなさまにとってすばらしい一年になりますように。




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posted by kbb at 14:16 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 小説・エッセイ タ行

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