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2008年07月04日

オアシス-生田沙代

「オアシス」 生田沙代

オアシス駅前の大通りから一本細い道に入ったところをさらに左に折れもっと細い、暗い道を行く。その店はそんな路地に面した地下にあった。昭和な感じの無口な旦那さんと明るい奥さんが二人でやっているようなお店だった。無駄なことは一切言わず、代わりにすべてを料理に注ぎこんでいるようなご主人で何を頼んでも満足のいくつまみがでてきた。奥さんの方は常に客に神経を使っているようで、グラスがあくかあかないかの時にはもう次の注文を笑顔でとりにやってきていた。そんな居ることだけでも気持ちのよいお店に友人を連れて行くと誰もがまた行きたいと言う。

最近、読む作家さんが決まってしまって、大きなフロアで店員がうるさいぐらい「いらっしゃいませ」を繰り返すような大衆居酒屋のような誰もが知っている作家しか読んでいない気がする。小さくても気持ちのよい、そんなお店のような小説家を見つけようと、本屋さんの書棚を端から端まで丹念に見て歩く。見知らぬ作家の名前を見つけてもタイトルと装丁が気に入るのが少なく、なかなかどれを買おうか決められなかった。

そんな中で手に取ったのが「オアシス」。生田沙代の作品だった。聞いたことのない作家さんだ。開いてみると文字のポイントも大きく、失敗したとしてもあまり時間の損失は少ないように思えた。

家に帰り、こわごわ開いてみる。ふむふむ。女の子がでてきて、駅前の駐輪場においておいたら自転車を盗られちゃったわけね。その自転車は大切なもので、ポスターを作って街中の電信柱に張り付けたり、せっせと街を歩き回って自転車を探すワケね。歳のそう離れていないお姉ちゃんがいて、旦那が単身赴任したと同時に家事をすべて放棄してもぬけの殻のようになっている母親がいるわけね。

って、そこらへんでだんだんと、本当にだんだんと小説的な物語になっていくんだけど、途中まではだらだらと二十歳そこそこの女の子の生活が続いて、まぁこれはこれで個人的には関心があるからいいのだけれど、自転車のお話は思い出したかのように出てくるだけで、少しだけ、ほんの少しだけ飽きていました。でも、最後の方でやっと、やっとその自転車がどうして大切なものなのかっていうのが読者に知らされて、そうなのかぁ、って思わずつぶやいてしまいました。だったらもっと早くに教えてくれればいいのに、って言葉ととともに。

裏カバーの見返しに著者のプロフィールが載っていました。今作で文藝賞受賞だそうです。なんだよ、オレが知らなかっただけかよ。新人賞とっているぐらいだから、そこそこ宣伝もされただろうし、結構平積みになっていたんじゃないだろうかね。結局素敵なお店は見つけられずに大衆居酒屋の四人掛けのテーブルに一人で座ってグビグビとビールを飲んでいただけってなりましたとさ。

ちゃんちゃん。




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posted by kbb at 19:42 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(1) | 小説・エッセイ ア行
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『オアシス』生田紗代 を読んで
Excerpt: オアシス (河出文庫)生田紗代 内容紹介 私が<出会った>青い自転車が盗まれた。 呆然自失の中、私の自転車を探す日々が始まる。 家事放棄の母と、その母にパラサイトされている姉、そして私。 女三人、奇妙..
Weblog: そういうのがいいな、わたしは。(読書日記)
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