本のタイトルは過去記事またはアマゾンへ飛びます。出版社等の確認にどうぞ。

2006年03月26日

あるようなないような-川上弘美

「あるようなないような」 川上弘美

あるようなないような10年ぐらい前まで、ベランダからお墓の見えるところに住んでいた。生まれ育ったところがお寺ばっかりあるような寺町に住んでいて、今まで寺町の中を3回引っ越したのだからベランダからお墓の見えるところに住むなんて当たり前のことだった。そのマンションに行くには小学校の通学路通りに行くならば、人が二人やっと並んで歩けるような細い道を通る必要があった。片方はコンクリートの壁、片方は向こう側が透けて見えるようなフェンスだ。その両方とも向こう側はお墓だった。そんな風にお墓が身近にあるような子供時代だった。

けれども、もっとお墓を身近に感じていたのは、小さい時から毎年、年に3回母親に連れられて多磨霊園のお墓にお参りをしていたからだ。春と秋のお彼岸と命日のクリスマスイブ。しかも、それは僕の会ったこともない、お兄ちゃんのお墓だった。今考えればおかしいことだけど、そのお墓参りに父親が一緒に来ることは滅多になかった。記憶にあるだけで、一回か二回ぐらいしかなかっただろう。そう、父親違いの兄なのだ。写真でしか見たことないけれど、6歳でなくなったらしい。

そのお墓参りを遠足に行く時のように楽しみにしていた。出発前に車にほうき、ちりとり、園芸用のはさみと新聞紙を用意する。多磨霊園につく前に花屋さんによってお花を買う。そんな非日常の出来事が起こる予感をさせてくれる準備がちゃくちゃくとすすんでいく。お墓についてからまず最初に会ったこともないし、顔も覚えていないような兄になんて言えばいいのだろうか、お願い事でもすればいいのかしら、なんて思いながら手をあわせる。それからもくもくとお墓を掃除する。落ち葉を集めて、墓標を濡れたぞうきんでよく磨く。そこからがお墓参りのクライマックスだ。

集めた落ち葉を一カ所に集めて、ついでに、他の人のお墓からでて、お参りに来た人が掃いて所々に集めてある落ち葉も一緒にして、新聞紙に火をつけて落ち葉焚きをする。最初は湿っていたり、まだ青い葉っぱかなんかでなかなか火がつかないのだけれど、いつのまにかぱちぱちと落ち葉がはぜる音が聞こえてくる。そんな音を最初に聞きたいがために火をつけさせてもらったことも何回もあった。そんなわけでお墓には悪い印象はない。むしろお墓参りと聞くとわくわくとすらする。

そんな風にお墓に対してわくわくしていたことを川上弘美の「あるようなないような」にある文章を読みながら思い出していた。川上弘美もお墓を嬉々として見て回るらしい。

この作品集は様々な媒体に載せられたエッセイをまとめたものだ。またエッセイを読んでしまった。やっぱり恋をしているみたいですね。頭の廻りが悪くて、おまわりさんに不審人物扱いされて、あなたの歳だったら女性の一人暮らしでも大丈夫でしょうなんてセクハラまがいのことを言われたり、学生時代の作文の授業が嫌いで、ずっと弟の赤ん坊の時のことばっかり書いていたけど、高校の修学旅行の京都を題材に書かなければいけなくなりそのとき初めて創作を書いたことなんか書いてあって、彼女の魅力が十分に詰まった一冊でした。

僕も小学校の時の作文の授業ってやつがとっても苦手で、「家でのお手伝い」という題で書かなければいけなくなって、やったこともないお風呂掃除を題材に想像でお風呂掃除している自分を創作したのだけれど、それが校内紙に載ってしまって、こんなんでいいの?なんて思ったりしていました。

川上弘美の作品を読むとなんだか無性におなかがすくんですよね。それもお寿司じゃなくてちらし寿司だったり、天ぷらじゃなくて天丼だったり。自分でつくって自分で、おいしそう、なんて独り言をいいながら食べたい。豚のショウガ焼きだったり、焼き魚だったり、なすのおひたしだったり。だんだんこの文章を書きながらも思い出して、おなかがすいてきました。

それとともになんだか久しぶりに母親のお墓に行きたくなってきた。歩いて10分ぐらいのところにあるのに、最近は命日の日にしか行ってなかったからなぁ。今から散歩がてら行ってきますね。





posted by kbb at 12:29 | 東京 ☀ | Comment(6) | TrackBack(0) | 川上弘美
この記事へのコメント
このお墓参りの記事はとても好きな感じです。
川上弘美さんにいいかんじで恋してますね。 だから、読後に素敵な文章が書けるんですね、kbbさん。
Posted by tsukiko at 2006年03月29日 17:56
tsukikoさん。
こんばんは。

tsukikoさんに褒めてもらえるなんてずいぶんうれしいことです。なんだか法外なことを要求されそうでお尻がむずむずしますね(笑)
さっき、小学生時代の校内紙にのった作文を読み返して見たのですけど全然成長のない文章をいまだに書いていることにちょっとびっくりしてしまいました。
このブログが最近川上弘美へのラブレターと化しているななんて最近思い始めてきましたよ。
Posted by kbb at 2006年03月29日 19:55
kbbさん、 一緒にメンチカツ行列の中心で、ホラを叫びませんか? (法外な要求) 
Posted by tsukiko at 2006年04月02日 02:02
tsukikoさん。
こんにちは。
その程度じゃまだまだ法外とはいえないですね。だってメンチカツ行列の中心でホラを叫ぶの楽しそうですもの。嘘を叫ぶよりよっぽど楽しそうですからね。そのときは是非誘ってくださいね。3時ぐらいがちょうどよいですかね。帽子を目深にかぶってマスクをつけて一瞬みただけで不審者のようなかっこうで行くことにしますよ。決行後はバラバラに逃げてレモンドロップで落ち合うことにしましょう。おいしいケーキでも食べながらね(甘いもの苦手だけど(笑))
Posted by kbb at 2006年04月02日 15:25
いつやる?いつやる? 来週やる?
落ち合う場所はレモンドロップじゃなくて
50/50がいいです。ご存知? 常連なの。

コメント欄でおもいっきり遊んでますね、私。
Posted by tsukiko at 2006年04月03日 01:01
tsukikoさん。
おはようございます。

今週やりましょう。善は急げというしね。みんなが楽しめるのならそれは絶対善なのだ!

50/50ってどこだろう・・・。聞いたことはあるのですけど、どこで聞いたかも思い出せないです・・・。常連のお店があるのっていいですよねぇ。

こんなコメント欄でよければいくらでも遊んでやってください。いつでも大歓迎ですよ。
Posted by kbb at 2006年04月03日 06:28
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

お名前・メールアドレス・ホームページアドレスを(入力があれば)クッキーに保存しますか?



この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。