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2006年03月29日

泳ぐのに、安全でも適切でもありません-江國香織

「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」 江國香織

泳ぐのに、安全でも適切でもありませんこんにちは。このあいだね。友人と話していたんですよ。デリカシーとデリケートはきっと元々同じ言葉の形容詞と名詞だからデリケートな人はデリカシーがあるんだよ。だから僕はデリケートだからデリカシーはちゃんとあるね、と。そしたらその子にあんたはデリケートじゃなくて、デリートだよって言われちゃいました。ショックです。

こんな世の中なので江國香織の「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」を読んでみました。江國香織がアメリカの海岸で、日本でなら「遊泳禁止」を書かれているであろう看板に書かれていた言葉を見つけました。

"It's not safe or suitable for swim"


こんな言葉からこの一冊の短編集ができあがっています。英語を見たときに「安全でも適切でも」よりも「安全でも快適でも」って訳した方がうまくいくんじゃないかしらなんて思ったのですけど、まぁそれは作家さんのイメージのふくらませ方ですからしょうがないですよね。でも、この看板すごい素敵じゃないですか。とってもアメリカ的だとも思うのですけどね。ちゃんと忠告もしたから、あとは勝手にやってくれ、責任はとらないぞ、って感じでね。でも、こうとも捉えられると思うんですよね。泳ぎたいなら泳げばいい。でもそれは誰にも止められないぞ。禁止することもすすめることもしない。だって泳ぐのは自分なんだもん。監視することはないけれど、遠くで見守っているから好きにしなさい。ってね。ちょっとこれはポジティブに捉えすぎですかね。

でもこんなイメージをもちたくなるような小説集なんですもの。
この本、なんだかタイトルを見て勝手にエッセイ集なんだろうなって思っていて、だったら手に取ることもないだろうなって決めてかかっていたのですけど、このあいだ本屋さんでたまたま見つけて手にとってみたら短編集だったんですね。ちょっとびっくりしたのと、うれしくなったのとないまぜの気持ちになって思わずレジに持っていってしまいました。

タイトルもいいのですけど、表紙がまたなんだか面白いんですよね。ただの歩道と車道と信号と並木。なにげない光景なんだけど、信号が黄色なんですよね。こういうときって赤とか青とかにするんじゃないのかしら、なんで黄色なんだろうってちょっと気になり始めるといろいろとイメージをふくらますことのできる表紙ですね。

もちろん十個すべての短編がなんだか心地よく感じられる小説だったのですけど、あとがきの江國香織の言葉がすごい好きでした。

人生は勿論泳ぐのに安全でも適切でもないわけですが...

瞬間の集積が時間であり、時間の集積が人生であるならば、私はやっぱり瞬間を信じたい。SAFEでもSUITABLEでもない人生で長期展望にどんな意味があるのでしょうか。

たしかに瞬間の集積が時間なんですよね。だからこそこの瞬間を大事にしなければならないはずなのに、下らない先のことばっかり考えてしまっていつまでもその瞬間を楽しめない。なかなか考えさせてくれる言葉ですね。

僕の個人的趣味なんだろうけど、うまいなぁ、また読みたいなぁって思う作家さんにしろ、また聞きたいなぁって歌の作詞家さんにしろ、とっても瞬間を切り取るのがうまい気がするんですよね。その瞬間を言葉にして表現して描写してそうやって文章が生まれる。そんな文章にいつまでも接していたいなぁって思うんですよね。その瞬間をを切り取るとなるとどうしても短編になってしまうのはどうしようもないですよね。

他にも"うんとお腹をすかせてきてね"の中の

女は、いい男にダイエットをだいなしにされるためにダイエットをするのだ。


とか面白い言葉がいっぱいある作品集でしたよ。



posted by kbb at 12:26 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 江國香織
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