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2006年03月30日

ニシノユキヒコの恋と冒険-川上弘美

「ニシノユキヒコの恋と冒険」 川上弘美

ニシノユキヒコの恋と冒険こんにちは。先日病院に行って待合室で名前を呼ばれるのをまっていました。その病院では個人情報保護の最近の流れに逆らってフルネームで患者さんの名前を呼びます。様々な名前の人がいて、それらにはそれぞれの誰かの思いが込められているんだなって思うとちょっと嬉しくなってしまいました。そのどれが欠けてもいけないなってね。だから番号で呼ぶような名前の欠けてしまう社会ってなんだかいやですね。

さて、その病院で二時間も辛抱強く待っていた間に読んでいた本、「ニシノユキヒコの恋と冒険」です。最近川上弘美ばっかり読んでいますね。なんだかついつい戻ってきてしまうんですよねぇ。ニシノユキヒコにまつわる女達がニシノユキヒコとの恋愛を語る連作短編集です。

ある人にとってはニシノさんであり、あるひとにとっては西野君であり、幸彦であったり、ユキヒコであったりニシノであったり。ニシノユキヒコは一人の人間ですけど、それぞれが見る顔、それぞれに見せる顔が少しずつ違うので十人それぞれが語るニシノユキヒコは少しずつ違う人間に見えてきます。別に意識的に見せる顔を変えなくてもそれぞれが見たい顔ってのはちょっとずつ違うのでこういうことってよくありますよね。

川上弘美はやっぱりうまいですよねぇ。十通りのニシノユキヒコのキャラクターがそれぞれちゃんといて、サイテーの男だって思うニシノもいれば、なんていい男なのかしらって思う西野君もいます。でも共通しているところもちゃんとあって、あぁ、同じ人なのねってちゃんとわかるようになっていますものね。

川上弘美はこの作品集でもいろいろなことを僕に教えてくれました。「あなたは他の人とは違うから」という言葉が女性にとって殺し文句であるとか、セックスとは親密な時間を作り、お互いの緊張を解いていく行為だとか、アンクレットはストッキングの上にするのではなくて、ストッキングの中にいれるものなのだとかね。

それぞれに、他の人と違うって言われると共感されていないようにも感じるから毎回毎回恋に発展するわけにはいかないんじゃないかしらとか、何回セックスしても緊張感のとれない相手もいるとおもうのだけれどとか、アンクレットをあんなぴっちりとしたストッキングの中にいれていたら肌に当たって痛くないのかしらとかって反論しちゃったのですけどね。

原田宗典の「優しくって少しばか」にアンクレットをつけた素敵な女性が出てきます。主人公と彼女が初めて結ばれた夜。彼がいざ彼女の足をひろげた時に彼女のつけているアンクレットが気になります。
「どうしてアンクレットをつけているの?」
「こうしておけばどっちが右足かすぐにわかるでしょ。」
この文章を読んでから、アンクレットをつけている女性に必ず同じ質問をしているのですけど、同じ答えをくれた人はいませんでしたね。ベッドの上のあの空気の中でしか言えない答えなのかもしれませんね。

もちろん西野君にもいろいろと教わりましたよ。自分は好きだけど、相手が自分のことをどう思っているかわからない。でもどうしても会いたい。そんなときはそれを素直に言えばいいんだってね。電話をかけて

ずっと会ってなかったからなんだかつまらなくて。会いたいんだ。もしかしたら、僕のこと、そんなに好きじゃないかもしれないけど。


この素直さが恋愛には一番大切なものなかもしれませんね。と、わかってもやっぱり言えませんよ、こんな言葉。「私のことどう思ってるの?」に匹敵する最後通告な気がしちゃってね。

posted by kbb at 12:43 | 東京 ☀ | Comment(4) | TrackBack(2) | 川上弘美
この記事へのコメント
kbbさん、こんばんはー。
最近本当に川上さんを読んでますね。いいな。
面白そうな上に いろいろお勉強もしちゃったみたいで 棚からボタモチ?
アンクレットの事を聞かれたら、
「静電気が逃げてくれるのよ。」
とか答えちゃうかもしれません…。
そんな効果があるとは思えないんですけどっ。
折角のイイ話だったのに、ぶち壊してしまったような。お許しを(>
Posted by MOW at 2006年03月30日 20:57
MOWさん。
こんにちは。

いつのまにか、川上弘美に戻ってしまうのですよね。海外旅行してきて、日本に帰ってきて「やっぱり日本が一番だ」なんて感じですね。
お、MOWさんもアンクレット使用者でしたか。「静電気が逃げてくれるのよ。」。いい答えじゃないですか。「え!?なんでそんなこと聞くの?」って聞き返されるのが一番辛いんですよね。ところでストッキングの中にいれるってのはホントのことなんですかね?そんな人見たこと無いのだけれど・・・
Posted by kbb at 2006年03月31日 15:57
私ならアンクレットをしている足をちょっと上げて 「体のこっち半分がほんの少し軽いからバランス取ってるの」 と言いそう。
・・お邪魔しました。
Posted by tsukiko at 2006年04月02日 02:09
tsukikoさん。
こんにちは。
なかなか素敵な言葉ですね。さすが年のごにょごにょ・・・。
じゃあ手伝ってあげるなんて言いながら足をひろげやすいですしね(笑)
まわりにはつけたことがないって子だらけなので、MOWさんもtsukikoさんも素敵なお姉さまばかりでうれしい限りですよ。
Posted by kbb at 2006年04月02日 15:27
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