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2008年02月05日

どーなつ-北野勇作

「どーなつ」 北野勇作

どーなつ韓国人のような中国人のようなアジア系の顔をした兵士が突然銃を突きつけてきた。突然のことだったが、おれはかっこよくその銃を蹴り上げて遠くへ飛ばす。まわりにおれを救出に来た兵士の姿が見えた。おれを襲ってきた兵士は反乱兵のようだ。反乱兵ととっくみあいになる。おれは反乱兵の上になり、彼の動きを封じる。反乱兵はおれの指を噛み、逃げようとする。おれは周りの兵士に助けを呼ぶが、誰も助けに来ない。指を噛むだけで他になにもしてこない反乱兵に少し疑問を感じ始めた。頭をなぐるとか他にできることがあるだろうに、なんて腕に力を込めながら考えた。

そこで目が覚める。しびれるほど手を握っていて、指が痛い。

会社帰りに満員電車に乗る。お腹がすいてどうしようもなかったけれど、ダイエット中の自分はそれを我慢して、窮屈なスペースに身体をもぐりこませる。本を読みながら電車に揺られ、最寄り駅で降りる。扉のすぐそばに女の子が立っている。どこかで見かけたことのある女の子によく似ていると思って、まず背格好を比べてみる。150cmないぐらいの身長だ。それで気になって、目を見たら切れながの目がよく似ていた。顔をのぞき込むと目が合った。まつげがピンと伸びている。今は仙台にいるはずなのに、どうしてここにいるんだろう、なんて考えながら家までの道を歩く。

どこまでが現実で、どこからが夢なのだろうか。仙台にいるはずのあの子は今どこにいるんだろうか。ベッドの隣で素敵な寝顔を見せたあの子は今東京にいるのかしら?

そんなふうに現実と夢の境目がなくなるような作品が連作短篇集、というか、全部でやっと一つの長編。10の短篇一つ一つでは決して存在しえないのが「どーなつ」という作品です。

人が人として生き残ることができなくなった地球。人は火星への移住を計画するが、人は火星で生き抜くこと、人が生きていけるように環境を整備することができない。そこで、火星に適応できるように人を改造する。そのために研究を続ける田宮麻実は・・・。田宮麻実の真の目的は・・・。

なんて感じに一つ一つの短篇が全然ちがう方向に向いていながら最後にきちっと一つの方向に向きます。それはあたかも、毎日見る夢が最後は同じことを、同じ方向を見ていたことに気付くように。

初の北野勇作作品でした。吉祥寺サンロードの中にある、新刊書店。最近POPが気に入って、よく行くことになった書店ですが、そこの店員さんの手作りであろうPOPが気に入って思わず買ってしまった作品です。そのPOPには、

村上春樹作品を読んだような読後感


とかいてありましたが、完璧に騙されました。ドーナツや熊、ピンボール、飼育係なんてキーワードはとっても村上春樹的でしたが、それらが指すもの、それらがつくるものはまったく違うものでした。いつもだまされるkbbですが、またもや完璧に騙されてしまいました。

その世界はぐるぐるまわるジェットコースターに乗って、地面におりたときのあのフラフラ感に似たものがありました。

お酒を飲んで、ところどころ記憶がないあの夜に似ているかもしれませんね。どこまでが自分の言葉でどこまでが自分の脳で考えた言葉なのかわからない。どの考えまで表明してしまったのか。はたして、自分はすべてをさらけだしてしまったのか。酒によって眠ってしまって、陽の光に気付いてふと目をさました、あの朝に読後感が似ているかもしれません。



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posted by kbb at 22:03 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 小説・エッセイ カ行
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