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2008年07月21日

謎の母-久世光彦

「謎の母」 久世光彦

謎の母こんにちは。三連休も終わっちゃいますね。なんだかこの三連休は遊び倒して充実なものになったんですけど、みなさんはどうでしたか?

久世光彦。初めて読む作家さんでした。川上弘美の「センセイの鞄」WOWOWで放送したときの演出をした方です。といってもこの人、本業は演出家ですが、作家としていくつも作品があります。そのうちの一つ「謎の母」です。

川上弘美の原作を映像化した人だから近いところもあるのだろうか、と読み始めましたが、期待を裏切られることはなかったです。といっても文章は全然違うので、何がどう同じって聞かれても困るのですけどね。きっと雰囲気というか、女の子の考え方が似ているのかしらって思いました。

一文一文しっかり読まないと、どっかで乗り遅れちゃうんじゃないかっていうぐら一文一文にしっかりと意味があって、無駄なところが一切ないって感じの文章で頭の中にすっと文章がはいってくるような作品でなかったのが少し疲れてしまうところでした。

物語は戦後すぐの日本が舞台です。母が幼い頃に若い男と家出した、15歳の女学生、さくらが主人公です。ある日小説雑誌で出会った小説を書いている人、朽木さん。自分のことが書かれていると思い、日記を盗み読みされたのかしら、と思わず手紙を書いてしまいます。そこから始まる作家と女学生の交流。子供のような朽木さんを見守る母のようなさくら。

でもやっぱりさくらは朽木さんに恋をしていたんだと思う。彼を自分のものだけにしたい。だけど奥さんも娘も二人いる朽木さんを自分のものにはできない。だからこそ遠くからどうしようもない男、朽木さんを見守るというスタンスに自分を押し込めてしまったのだろうな。

朽木さん、モチーフは太宰治になっています。作品の中でも朽木さんは最後の最後でちゃんと入水自殺をします。さくらと朽木さんの恋物語として読むこともできるし、昭和初期の文学史と読むこともできるようなこの作品。なるほどなぁって最後にはうならされてしまいました。

人の人生をしっかりとモチーフにしてなお自分の表現も作品に入れることのできる才能。それってやっぱり演出家の才能なのかもしれないですね。

戦後の貧しい世界では三連休を充実するなんてできなかったのかもしれないけど、やっぱり人は恋をし、じっくりと生きている。人っていつの時代も変わらないですね。

ちなみにこの作品の解説は川上弘美が書いています。やっぱりちゃんと繋がっていましたね。





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2008年07月02日

菊葉荘の幽霊たち-角田光代

「菊葉荘の幽霊たち」 角田光代

菊葉荘の幽霊たちおはようございます。満員電車に乗っていて不思議に思うことがあります。これだけ肌をくっつけあっているのに誰も彼もがお互いを知らない。目を合わせることもない。むしろ迷惑に思っているのが普通でしょう。みんないらいらしているのを見ていると、もう少し仲良くすればいいのになんて思ってしまう。でも毎日毎日やっぱり同じように満員電車に乗ってぎゅうぎゅうと押し合わないといけない。まぁ同じ境遇で同じ目的地(電車の終点)へ向かっているっていうことで同志のようなものなのだからこそ、我慢できるのかもしれないですけどね。

久しぶりの角田光代です。「菊葉荘の幽霊たち」。ハルキ文庫の作品でおもしろかったのは初めてかも。

あらすじといえば、ある日友人が部屋探しをすることになったわたし。最初に少しでも不満のあるところに住むと必ず悪いことがある、例えば、突然大家に出て行けと言われたり、と友人吉元は言う。そんなわけで、街の隅々まで歩いて部屋を探しにいくのだけれど、よさそうなところは全部埋まっている。そんな時吉元は言い出す。よさそうなところは全部埋まっている。それなら住んでいる人を追い出せばいいんだ、と。そしてある日見つけた菊葉荘。そこから二人の住民追い出し作戦がはじまる。わたしは住民の一人、大学生の蓼科友典に近づく。

まず、菊葉荘がそんなにいいところだと思えなかった。なんかじめじめとしていて、立て付けが悪くて、夏は暑くて冬は寒い。路地の奥にあって吹き溜まりのようなイメージ。

「わたし」は吉元のために菊葉荘の住人、蓼科に近づくのだけれどその日には酔ったあげくに性交する。フロントホックのブラジャーをはずし、何かの競技のように胸を揉み始める蓼科。そんな蓼科を出ていくように説得しながら覚めた目で観察している「わたし」。

何回か性交したことのあるぐらいの友人、吉元のために蓼科なんかと性交してしまうことなんかあるのかしら。もし、「わたし」が吉元に恋愛感情があるとしたら、なおさらそんなことしないのじゃないかしらって思うのだけれど、どうなんでしょうかね。それとも恋愛感情があるからこそ、そこまでやっちゃうのかしらね。

朝から性交性交って普段使わない言葉を言っているけど、これは筆者の言葉なので勘弁してくださいね。

そんな風にいくつか疑問点を持ちつつも楽しめたのは角田光代の文章力、物語構成力の高さによるものなのでしょうね。澱みのない文章でどこまでも止まることのない物語が続いていきます。

もしくは筆者がどこまでも楽しみながら書いたと感じられるからなのかもしれないですね。角田光代の趣味というか、好みのようなものがいくつもでてきて、ウエスト部分にばかでかいリボンのついたワンピースがでてくるのだけれど、僕好みのかわいらしい服を少女趣味と断じてみたりと好きなことを言っています。今朝もかわいらしいワンピースを見ることだけが楽しみで満員電車に乗ろうと思っているのに。

角田光代と僕の趣味はあわないのかぁ、残念だなぁ、と思いつつもこの文章力が捨て置け無いなぁと思っています。




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2008年06月21日

北村薫の創作表現講義 あなたを読む、わたしを書く-北村薫

「北村薫の創作表現講義 あなたを読む、わたしを書く」 北村薫

北村薫の創作表現講義こんにちは。せっかくの週末だというのに、風邪をひいてしまったようです。木曜の夜に友達と飲みに行った飲み屋さんですでに、鼻はじゅるじゅる、くしゃみはしょっちゅうって感じでした。昨日も会社に行くと鼻水は止まらないし、咳はコンコンでるし、くしゃみはぶわっくしょんってのが続いて、同僚のみんなに迷惑をかけているはずなのに、誰も「風邪なの?」って言ってくれない。自分から言い出すわけにもいかないし、と思ってたらみんなに風邪菌をばらまいてると思うと段々と申し訳なくなっちゃって、どんどん小さくなっていました。あぁいうのって心配するほうも難しいですよね。風邪ひいたの大変ねぇって感じで近づくと相手を調子に乗らせるだけだし、なにも言わないでいると、なんか怒っているように感じさせちゃうし、笑い話でごまかせばいいのだけれどね。そんな理由で「バカは風邪をひかない」なんて真実とはかけ離れたような言葉があるのかもしれないですね。

さて、風邪を引いていても飲みには行くわけですけど、昼間は布団にはいって本をいっぱい読めるってわけで、いいこともあるわけです。
ブログなんて書いていると文章をもっとうまく書きたいって思うわけです。そんな折り本屋さんでこんな帯を見つけました。

「この本の面白さがわかる人は小説が書けます。」


なんだか挑戦されているようで、思わず手にとってしまいました。北村薫の小説は読んだことないのに、こんな言葉に騙されて買ってみました。「北村薫の創作表現講義」。北村薫が母校の早稲田大学文学部で授業した内容が本になっています。

この本、けっして文章の書き方をおしえてくれるわけではありません。当然ですよね。そんなの手取り足取り教えられたら世の中には小説家があふれてしまいますものね。

ではなにが書かれているかというと、小説とは何かってことなんですね。もちろん漠然としていることなんでしょうけど、どうやって考えはじめるか、どういう文章が小説でどういう文章が小説ではないのか。そんなことを読みとれるのではないかと思いました。

結局、小説ってどう書くかっていうのはそこまで重要ではなくて、何を書くかってことが重要なんでしょうね。それを見つけられない限り、世の中にゴマンといる小説家志望の人は世に出ることはできないんでしょうね。逆に言えば、世の中にいるホンの少しの小説家になれた人たちって言うのは何を書くかを見つけられた人たちなんでしょうね。

ブログなんて短い文章ですけど、やっぱり毎日何を書くかって考えちゃいますものね。そうやっていると電車にのっていても、街を歩いていても目を皿のようにして何かを探している気がします。女の子と歩いているときょろきょろしている落ち着かないやつってことになっちゃってるんでしょうけどね。むしろその女の子にもっと目を向ければまた違った展開になるんじゃないのかしらって、やっぱり反省で今日の記事も終わろうとしています。反省する材料は世の中にいくらでも転がっていますね。(ノД`)シクシク。




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2008年05月22日

陸の海賊-コナン・ドイル

「陸の海賊」 コナン・ドイル

陸の海賊こんばんは。僕はいつまでも逆上がりのできない小学生でした。未だにできません。逆上がりができなくたって、ちゃんと生活はできるけど、子供ができて、お父さん教えてよ、なんて言われた時のために世の中のお父さんは練習しちゃうんでしょうかね。そのためにもおなかのお肉を少し落とさないとだめですかねぇ。

本が好き!経由でいただいた、コナン・ドイル作品です。小学校の時、学校の図書室で借りてきた「シャーロック・ホームズの冒険」で挫折して以来のコナン・ドイルです。逆上がりは克服できないかもしれないけど、コナン・ドイルぐらいは読んだことがあると、息子に胸を張っていいたいですものね。

といっても、ホームズもでてこないし、あまり楽しめなかったのも事実です。てっきりコナン・ドイルは探偵小説ばっかり書いているものと思い読み始めたのも失敗でした。読み始めて、謎はなんだろう、とどきどきしながら読み始めて、謎がでてこないまんま、短編の一作目が終わって、初めてこれはミステリじゃないって気付いたわけです。

じゃあなにがテーマかというと、スポーツです。ボクシングやクリケットなど、当時のイギリスで盛んだったスポーツがテーマに取り上げられています。かといって、クリケットのルールもあまりよくわかっていないので、随分ひどい想像をしながら読んでいったんですけどね。

他にも海賊の船長の話なんかがあって、これが一番動きがあって楽しめたかもしれませんね。

というわけで、小学校の時以来の挑戦で克服してみたわけですけど、あまり実になっていないですね。これじゃあ、ドイルってどんなお話なの?って聞かれてもうまく答えられないですものね。そんな時は川上弘美や絲山秋子を紹介してお茶を濁しておこうかしら。でも、それを読んで、ひどい男でも生きていけるんだって思われても困っちゃいますかね。




陸の海賊
  • コナン・ドイル著、北原 尚彦編、西崎 憲編
  • 東京創元社
  • 924円
Amazonで購入
書評/歴史・時代(F)


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2008年04月19日

月曜日の水玉模様-加納朋子

「月曜日の水玉模様」 加納朋子

月曜日の水玉模様おはようございます。今日はやっと晴れましたが、雨が続いていましたね。月曜日は四週連続で雨だったみたいですよ。カーペンターズの歌じゃないですけど、なんだか憂鬱になりますね。誰か雨の日は祝日にするって法律を作ってくれる政治家がいれば支持するんですけどね。って、晴れている日に働かないといけなくなりますね。花見に行けなくなっちゃうからそれはそれで困りものですね。

というわけで、雨の物語だと思って「月曜日の水玉模様」を読んでみました。ところがタイトルから雨のお話かと思っていたら、ネクタイの柄の話でした。ちょっと残念に思いながら初加納朋子でしたが、文章が読みやすくてすんなりと入っていけましたよ。作家自身はそんな風に比べられたくないだろうけど、なんだか荻原浩の文章に近い気がしました。

連作短編のこのお話ですが、OLの陶子と電車の中で知り合った荻が難(?)事件を解決していくという物語です。そしてだんだんと距離の縮まっていく二人の物語の方もなかなか楽しかったです。和光の時計の下で待ち合わせしている二人の物語を読みながら、うらやましいと思わずよだれがでてきちゃうほどでした。

加納朋子は鮎川哲也賞を受賞しているらしく、ミステリ作家らしいのですけど、読む前は作者名とタイトルからの思いこみで、絲山秋子っぽい作品なのかしらと思って読みはじめたんですけどね。結構思いこみ強い方だからこういうことになるんでしょうね。まぁそのギャップにもまけず、どんどん読み進められたのがよかった。素敵な出会いでした。

今回のは短編ということもあって、次回はもう少し長いのが読んでみたくなりました。また一人お気に入りの作家さんができてよかったよかった。こんな出会いをもたらしてくれるなんて雨も捨てたもんじゃないですね。




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posted by kbb at 10:26 | 東京 ???? | Comment(0) | TrackBack(0) | 小説・エッセイ カ行

2008年02月05日

どーなつ-北野勇作

「どーなつ」 北野勇作

どーなつ韓国人のような中国人のようなアジア系の顔をした兵士が突然銃を突きつけてきた。突然のことだったが、おれはかっこよくその銃を蹴り上げて遠くへ飛ばす。まわりにおれを救出に来た兵士の姿が見えた。おれを襲ってきた兵士は反乱兵のようだ。反乱兵ととっくみあいになる。おれは反乱兵の上になり、彼の動きを封じる。反乱兵はおれの指を噛み、逃げようとする。おれは周りの兵士に助けを呼ぶが、誰も助けに来ない。指を噛むだけで他になにもしてこない反乱兵に少し疑問を感じ始めた。頭をなぐるとか他にできることがあるだろうに、なんて腕に力を込めながら考えた。

そこで目が覚める。しびれるほど手を握っていて、指が痛い。

会社帰りに満員電車に乗る。お腹がすいてどうしようもなかったけれど、ダイエット中の自分はそれを我慢して、窮屈なスペースに身体をもぐりこませる。本を読みながら電車に揺られ、最寄り駅で降りる。扉のすぐそばに女の子が立っている。どこかで見かけたことのある女の子によく似ていると思って、まず背格好を比べてみる。150cmないぐらいの身長だ。それで気になって、目を見たら切れながの目がよく似ていた。顔をのぞき込むと目が合った。まつげがピンと伸びている。今は仙台にいるはずなのに、どうしてここにいるんだろう、なんて考えながら家までの道を歩く。

どこまでが現実で、どこからが夢なのだろうか。仙台にいるはずのあの子は今どこにいるんだろうか。ベッドの隣で素敵な寝顔を見せたあの子は今東京にいるのかしら?

そんなふうに現実と夢の境目がなくなるような作品が連作短篇集、というか、全部でやっと一つの長編。10の短篇一つ一つでは決して存在しえないのが「どーなつ」という作品です。

人が人として生き残ることができなくなった地球。人は火星への移住を計画するが、人は火星で生き抜くこと、人が生きていけるように環境を整備することができない。そこで、火星に適応できるように人を改造する。そのために研究を続ける田宮麻実は・・・。田宮麻実の真の目的は・・・。

なんて感じに一つ一つの短篇が全然ちがう方向に向いていながら最後にきちっと一つの方向に向きます。それはあたかも、毎日見る夢が最後は同じことを、同じ方向を見ていたことに気付くように。

初の北野勇作作品でした。吉祥寺サンロードの中にある、新刊書店。最近POPが気に入って、よく行くことになった書店ですが、そこの店員さんの手作りであろうPOPが気に入って思わず買ってしまった作品です。そのPOPには、

村上春樹作品を読んだような読後感


とかいてありましたが、完璧に騙されました。ドーナツや熊、ピンボール、飼育係なんてキーワードはとっても村上春樹的でしたが、それらが指すもの、それらがつくるものはまったく違うものでした。いつもだまされるkbbですが、またもや完璧に騙されてしまいました。

その世界はぐるぐるまわるジェットコースターに乗って、地面におりたときのあのフラフラ感に似たものがありました。

お酒を飲んで、ところどころ記憶がないあの夜に似ているかもしれませんね。どこまでが自分の言葉でどこまでが自分の脳で考えた言葉なのかわからない。どの考えまで表明してしまったのか。はたして、自分はすべてをさらけだしてしまったのか。酒によって眠ってしまって、陽の光に気付いてふと目をさました、あの朝に読後感が似ているかもしれません。



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posted by kbb at 22:03 | 東京 ???? | Comment(0) | TrackBack(0) | 小説・エッセイ カ行

2008年01月03日

ボーイズ・ビー-桂望実

「ボーイズ・ビー」 桂望実 

ボーイズ・ビー あけましておめでとうございます。正月は車が少なくて空気がきれいなので、空がきれいですね。太陽の光すらやさしく降り注いでくる気がします。酔っぱらいの僕を見る周りの目は全然優しくないんですけどね。

毎年、初日の出を見るために朝まで起きて居るんですけれど、今年は23時50分までは記憶があるんですけれど、そこからばたっと午前2時までの意識がありません。きっと日本で一番最初に睡魔と戦って敗れた男でしょう。というわけで、カウントダウンをしていないので、僕だけまだ2007年にいるってことには・・・できないですよね・・・。さて、あほなことを言っていないで、新年を迎えて気持ちを新たにがんばろうとおもいます。

今年最初に読んだ本は「県庁の星」の桂望実の「ボーイズ・ビー」です。県庁の星が読みやすくて好きだったので、楽しい気分になれるだろうと思って、本屋さんで思わず買ってきました。帯に

     いいなこの本。みんなイカしてる!

ってのを楽しみにさっそく開いてみました。

結論からいうと、この本を新年最初に選んでよかった。心が洗われる気がしました。文章自体は小学生ぐらいの子が読んでもとっても理解のできるようなお話しになっているんですけれど、書いてあることはいくつになっても理解できないこと、理解したくないこと、って感じですかね。

小学六年生の隼人は去年母を亡くし、その死を理解できず心を壊していく小学一年生の弟の直人に母の死を理解させたいと、悩みます。ひょうんなことから知り合った靴職人の栄造とともに一つずつ前にむかって少しづつ進み出します。靴造りがうまくいかない栄造も隼人や人との関わりを通して、少しずつ新しい靴造りにむかっていきます。

って、感じのストーリーです。母を亡くした小学生の気持ち、母の死を理解できない弟を思いやる小学生の兄の気持ち、母の代わりにやってくる母の妹に反発する気持ち、妻を亡くし息子たちとの関わりに変化を求められる父の気持ち。いろんな気持ちがうまく描かれていて、途中で涙が止まらなくなりました。いろんなものを乗り越えながらなんとか一つになろうとする家族に思わず「がんばれ」と声をかけながら読んでしまいました。

家族の核として存在していた母がいなくなったあと、その家族はバラバラになるか、それとも新たな核を作り出すか、それしかないんですよね。核のなくなった家族に苛立ちながら、それでも直人を思いやる隼人があまりにもかわいくて、かわいそうで、かっこよくて。自分も弟がいるのですけど、そんな兄貴でいてやれたかどうか自信がありません。だめ兄貴ですねぇ。

そんな弟ももう二十代半ばを過ぎたってことで、歳とったってことですね。直人と隼人のような関係でいられたのはいくつぐらいまでだったんでしょうか。もう忘れちゃいました。

とまぁ、新年に素敵な本に出会わせてくれた、ブックオフの天使に感謝です。(おーなり由子の「天使のみつけかた」を読んでからこんなのばっかりですね(笑))

今年はがんばるぞー!みなさんにとっても素敵な一年でありますように。
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2006年06月17日

陰日向に咲く-劇団ひとり

「陰日向に咲く」 劇団ひとり

陰日向に咲くども、こんにちは。五月三十日にミニ朝顔の種を植えました。途中で腐っちゃったんじゃないかしらとちょっと心配になっていたのですけど、四、五日前にそれがやっと芽をだしました。かわいいかわいい朝顔に「あさみちゃん」と名づけて毎日毎日声をかけながら眺めているのですけど、かわいいですねぇ。なんだかとっとも愛おしくて枯らしちゃいけないなと大事に育てています。でも、朝方に朝顔の芽にむかって女の子の名前を呼んでいるのって冷静に考えると気持ちわるいかもですね・・・。




200606110423001.jpg

朝顔のあさみちゃんと戯れるドコモダケ


さて、そんなことはさておき、劇団ひとりの「陰日向に咲く」です。いろんなところで話題になっていて、よく売れているようで、本を開いて最初の数ページまでは「どうせゴーストライターだろ」なんて思っていました。帯に恩田陸が

ビギナーズ・ラックにしては上手すぎる。あと二冊は書いてもらわなきゃ。

なんて書いてあって、「ほんとかしら」なんて思いながら開いてみました。

これはおもしろい!というか、うますぎる!
もうゴーストライターだかどうかなんて関係なく、おもしろいって思っちゃいました。お笑いなんてやめて作家になればいいのにとすら思ってしまうほどに。

陰に入ってしまったような人生を歩む五人のそれぞれを描いた連作短編集です。サラリーマンの生活に疲れて、ホームレスにあこがれる中年。アイドルのおっかけをする青年。勢いでカメラマンを目指すと言ってしまった普通の女の子。借金まみれの駅員。修学旅行で出会った売れないお笑い芸人に恋をしてしまった中学生。この五人が輝く瞬間をうまく切り取っています。それぞれの短編の主人公が微妙に絡み合っていて、最初のうちは絡み合わせ方が無理矢理といえなくもなく、それじゃあ世間が狭すぎるだろなんて思いながら読んでいたのですけど、最後の二編はそんなこともなく、思わず「いい」ってつぶやいちゃいました。

人っていろんな才能がある人がいるんですね。純粋にうらやましくありますね、こういう人って。この人、本書いていた方が絶対儲かりますよ。それにこんなにおもしろい本なんだから書いているときは充実感でいっぱいだろうな、なんて真剣に将来についてやっと悩みはじめたkbbさんは考えてしまいましたとさ。本と関係ないところで考え込んじゃうのはいつもの悪い癖ですね・・・。
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2006年04月16日

星に願いを。-川口晴

「星に願いを。」 川口晴

星に願いを。おはようございます。先日ダーツに行ったらびっくりすることが起こってしまいました。



とぼけた顔のフライトがかわいいでしょ?
           びっくりすること

ダーツの矢のフライト(羽の部分)に後から投げた矢が刺さったのですよ。もうね、びっくりするしかなかったですね。こんなのドラマや映画でしか見たことなかったですからね。しかもすっぽ抜けたのがこんなのになってしまって、動揺しまくりでした。おかげでそのあとはぼろぼろでしたけどね。

そんな奇蹟が起こる物語「星に願いを。」です。竹内結子主演の映画の小説化らしいです。映画は見たこと無かったのですけど、ブックオフでみつけて、読んでみようと軽い気持ちで買ってしまいました。

文章自体はとっても映像的で読みやすくてよかったですね。ファンタジー色が強いと言うことでなかなかご都合主義なところもあるけれど、まぁそれは映画ということもあってしょうがないですね。看護婦・奏は救急救命室の看護婦なんですけど、彼女が看護師であるにもかかわらず、一人の患者さんの死によって立ち直れなくなってしまうところはリアリティがあって、なかなか興味深かったですね。自分の気持ちや感情を押し殺さなければやっていけない職業にもかかわらず人の死と隣り合わせなんて、すさまじいですよね。

函館が舞台のお話なんですけど、先日友人が函館に旅行に行って、その子から聞いた函館の景色がとってもそのまんまでなかなか楽しく読めました。一度でいいから函館に行ってみたくなりましたよ。そんな点ではこの映画なり小説は大成功なんでしょうね。

今度テレビで同じ竹内結子主演の「今、会いにゆきます」をやるようですね。これは友人からもすすめられていて絶対見ようと思っています。楽しみですね。
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2006年03月05日

科学者は妄想する-久我羅内

「科学者は妄想する」 久我羅内

科学メは妄想する.jpgこんにちは。2036年からのタイムトラベラー、ジョン・タイターが来ていたという記事を見つけました。(新科学と健康と雑学 リンク先のブログの内容の真偽については自己判断でしてください)2000年の11月に未来からやってきて、荒廃している核戦争後の世界に必要なコンピュータを得るたるのと、近未来予言をして未来を変えることを使命としてやってきたらしいです。インターネット上の掲示板で様々な人の質問に答える形でいろんなことを予言していきました。

イラクが核兵器を隠しているという理由で第2次湾岸戦争が起きる。


という予言が当たったりして、なかなかおもしろいですね。
まだ起こっていない予言なんかも結構あったりして、未来世界は結構怖いようですよ。

さてさて、そんな疑わしいというか、信じられないことを真剣に科学的に解き明かそうとしている科学者ばっかりを集めた本「科学者は妄想する」を読みました。妄想なんて言葉の入ったタイトルを見た瞬間にこれは僕のためにある本だ!と思ってレジに持っていってしまいました。

予知能力や宇宙人誘拐、幽霊の存在、テレパシー、死者との交流、ドッペルゲンガー、地球温暖化の解決策として地球を少しだけ太陽から離そうとする計画などなど信じられないことや実現不可能そうな説ばかりがたくさん紹介されています。

一目みただけだとトンデモ話の集まりのようですけど、トンデモ話と、珍説奇説・異端の考え方との違いは事実から出発してそれを論理的に仮説をたてて、その仮説を証明していく形で説明できているかどうかってことだと思うのですけど、この本に紹介されているのはすべてその作業の上に成り立っているのでなかなか興味深かったですね。トンデモ話として一蹴することもできない説得力にあふれた、さらに言えばなんだか楽しくなるような説ばっかりでしたね。

著者は「特命リサーチ200X」の元スタッフでおもしろそうな学説や研究を探すのを仕事にしていたようなので、こういうのを探すのがうまいんでしょうね。ずらずらと出てきます。著者のHPでは無料のメルマガも発行しているようで興味津々にさっそく登録してしまいました。

中に一つすっごいおもしろいことが紹介されていて、笑いは伝染するというものでした。心理学者とかもちゃんとした実験をしているようで、笑い声だけでなんとなく笑ってしまうことを脳のある特定された部分に注目して説明しています。常に笑顔でいるべし、って言うのは実は科学的に裏付けのできる素敵なことだったんですね。常に笑顔でいれば、他の人にもそんな笑顔が伝わっていき、それでみんなが笑顔で暮らせるなんて素敵な仕組みを人間はもっていたんですね。

日本人の研究者でこういうおもしろいことを言ってる人はいないかしらなんて思っていたところで最近、ネット上で話題になっている研究者を見つけました。同志社大学の工学部物質化学工学科というところにいる堀内龍太郎教授の研究テーマなんですけど

ドーナツにダンゴを押し込んだら、ドーナツがどう変形するかを研究(参考ページ)


なんですって。堀内教授がなんだか素敵なおじさまに見えてきたのは僕だけでしょうかね。(実際は楕円曲線のなんとかってのを研究している人らしくて、それをわかりやすい言葉に変えるとこういう風になるようです。わかりやすい言葉で説明できるのも才能だななんて思います。)
posted by kbb at 15:25 | 東京 ???? | Comment(2) | TrackBack(2) | 小説・エッセイ カ行

2006年02月28日

ピンク・バス-角田光代

「ピンク・バス」 角田光代

ピンク・バス.jpgおはようございます。最近ダーツがマイブームになりつつありまして、二日連続でダーツ大会を開催しております。初日は思いっきり酔っぱらっていたのに、昨日はちょっとムキになりましてアルコールを抜いて挑戦してみました。なかなか上達しないけれど、まだまだこれからだぞってことで練習の真っ最中です。今、この時間は二日遅れでやってくるであろう筋肉痛との戦いの真っ最中です。

さてさて、ダーツなんかに夢中になっているので本を読む時間がなかなかとれなくなっていますけど、昨日は角田光代の「ピンク・バス」を読みました。"ピンク・バス"と"昨夜はたくさん夢を見た"の中編二つが収録されています。

"ピンク・バス"は妊婦サエコのお話。妊娠して喜んでいるサエコのところにある日旦那の姉の実夏子がやってきて、居候していく。実夏子はピンク・バスがお迎えに来るまでいさせてくれという。

"昨夜はたくさん夢を見た"は中古レコード屋さんでアルバイトをしながらふらふらしているカオルの物語。カオルは大学受験のために友人に家庭教師をお願いしたにもかかわらず、それに飽きちゃってスキー旅行に勝手に行って、スキーもせずに一日中かまくらをつくっているような女の子。ある日恋人でもあり、仲間の一人でもあるイタガキが青森から帰ってくると今までと変わっていた。そしてインドに旅立ってしまった。

裏表紙風にあらすじをまとめてみましたけど、ぜんぜんおもしろくなさそうですね。これじゃコピーライターや編集者にはなれそうにないですね。というより、あんまり何をいいたかったのか理解できなかったってのが本音なんですけどね。

このブログを見ている友人にも最近おもしろそうな本読んでないねって言われちゃったしね。絶対この人の本は面白いってのはあるんだけど、新規開拓しようとしている今は自分に合わない本に出会うのはしょうがないかな、なんて今は自分を慰めています。

でも一つだけ、よくテレビでみる世界の天気なんてコーナーについての記述があって、こんなもん誰が必要とするのかしらなんてカオルは思っていたのだけれど、イタガキがインドに旅立ってからそればっかり気になってしまい、彼の現在の生活を想像するのに具体性を持たせるのに役立っているなんて描写があります。僕の友人は現在何人か海外に留学していたり遊びに行ってたりするのですけど、世界の天気を見るたびにそんな彼らの彼女らのいる場所に思いをはせていたので、共感できるところでした。

この本の解説を石川忠司という文芸評論家が書いているのですけど、"角田光代の'疲労感'について"というタイトルでこれがなかなかどうして、いわゆるセンター試験の評論文のような堅い感じの文章で、それでいて、学術論文とも体裁が違って、要するにあんたなにがいいたいのさってつっこみをいれたくなるような文章でした。こんな文章久しぶりに見たななんて、ちょっと嬉しくなってしまいました。

角田光代の本は前に「まどろむ夜のUFO」を読んだだけだけど、"昨夜はたくさん夢を見た"が一番好きな作品かななんて思っています。
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2006年01月07日

まどろむ夜のUFO-角田光代

「まどろむ夜のUFO」 角田光代

まどろむ夜のUFO40代後半旦那有り、子供無しの仕事ばりばりのキャリアウーマンが少子化問題について話しているのを聞いて空しくなってしまったkbbです。こんにちは。

今日の本は角田光代の「まどろむ夜のUFO」です。中編2本と短編1本の作品集。彼女の文章との最初の出会いは毎日新聞に書いてあった「読書日記」というコラムだった。読んだ本を紹介するって主旨のものだけれど、その文章がすっごく読みやすくて表現もおもしろかったので、読んでみようと思い立ったのが3年前ぐらい。その記事は切り抜いてずっと机の前のコルクボードに貼ってあってもうすっかりタバコのせいで色も褪せている。しかし、ずっとその記事が貼ってあるにもかかわらず、最近話題になっている角田光代とまったく結びつかなかった。で、たまたま本屋に行ってたらおいてあった文庫本を買って読んでいてふと目をあげてその記事が目に付き思い出した次第です。

なんだか描こうとしているのは現実感のない川上弘美的世界なのかなって思ってしまった。でもどっちが先だかは知らないけど(デビューは角田光代の方が先みたい。ということは川上弘美の描く角田光代的世界といったほうがいいのかしら)。同じ世界なのかなと思いつつもその入り口である文章のスタイルが全然違うから文章が全然頭にはいってこない。薄い文庫本なのに読むのに3日もかかってしまいました。これは現在の自分の調子の問題であるのかもしれないけれど。なんだかこの小説を読んでいたら自分の常識というかよって立つところというか自分の立場がぐらぐら揺れはじめてしまって、自分はこんなところで何をやっているんだろうって思ってしまって、そんな時に冒頭のことがあったわけです。だからその人が何を言うのも自由だし、批判するつもりもないのだけれど、この人は何をいってるのだろうって思ってしまって空しさしか感じなかったのでした。

とにかく作品中に非現実的というか非常識というか常識ではわりきれない人たちが多くて、うまくその世界を想像できなかった。最後の短編"ギャングの夜"はおもしろいと思ったのだけれど、その前の2編で消耗しきっていたのでそこまで新鮮な喜びを感じられなかったのが残念。自分が回復したときにでも別の短編集を読んでみようと思う。てかこの人他に短編集だしているのかしら。探さないと。というわけで彼女への評価はひとまず保留です。