

もう何回この映画を見ただろうか。テレビでやるときは毎回見ているし、ビデオに録って保存もしていた。今回のテレビ放映でDVDにも保存してしまった。
初めてこの映画を見たのは、10年以上前のことだ。アルバイト先の同い年の女の子に
「飲みに連れて行ってもらえませんか?」
と言われた。別に当時からそんなにお酒を飲んでいたわけでもなく、それを公言していたわけでもなかった。たいして仲良くもない彼女の口からそんな言葉がでてくるなんて思ってもいず、驚きとともに、軽い気持ちでいいよと返事していた。これが僕の生まれて初めてのちゃんとしたデートだった。
せっかくのデートなのだから、デートらしいことをしたかった。彼女に
「飲みに行く前に映画でも見ようよ?何が見たい?」
と誘ってみた。今なら絶対しないのに。初デートで映画を観に行くなんて。今ならそんな子供っぽい映画ってバカにでもするのに、その当時の二人は真剣だった。彼女の家の近くの駅で待ち合わせをして、渋谷まで行き、劇場に向かった。時間も場所も完璧に調べていたので抜かりはない。映画にでてくる、月島雫の着ていた制服が彼女の高校の制服によく似ていたことと、映画にでてくるどの女の子の服もかわいいなって思った。そして、映画のように告白したら楽しいんだろうなって漠然と思っていた。
その後、友人がよく女の子を連れて行くと聞いていたお店に行った。雰囲気の若いお店で高校生、大学生ぐらいのお客さんでいっぱいだった。僕はジンライム、彼女はカルアミルクを頼んでいた。二杯ずつ飲んだところで、彼女が
「なんだか酔っちゃった。眠くなっちゃったみたい。」
ここで普通の男だったらどうするのだろうか。すぐそこには円山町がある。一瞬、誘われているのかしら?なんて考えもよぎったけど、そんなわけないなとすぐにその考えを打ち消してじゃあ帰ろうと言っていた。
彼女の家の近くの駅まで送っていくつもりで電車に乗って、改札を出たところで、
「今日はありがと。楽しかったよ。」
の言葉とともに手をあげかけたところで、彼女から思わぬ言葉がでた。
「ちょっとその辺歩いていかない?」
僕は当時その辺の地理に疎くて、彼女の押す自転車の半歩後をついていった。ずいぶん歩いたのだと思う。雰囲気の良さそうな散歩コースだった。そう、カップルが酔い覚ましに歩くようなコースだ。今から思えば、新宿御苑の周りや、お化けが出ると言われているトンネルなんかを通って神宮外苑の絵画館の前までやってきた。どこをどう通ったのかもわからず、ただついていった僕は彼女の、ちょっと座ろうか、の言葉にちょっと安心した。どこまで連れて行かれるのか、終電に間に合うかしらなんてことを心配し始めていたからだ。
座ってあたりを見回すとそこら中にカップルがいた。カップル達は抱き合ったり、キスをしていたり。そりゃそうだろう。絵画館がライトアップされて、自分たちのいるところは適度な薄暗がり。こんな場所にカップルが集まらないはずがない。ずっと歩きながら、彼女がなんでこんな風に歩いて、こんなところまで来たのか、無い経験とよく聞いた友人の魅力的な恋愛談とをつきあわせながら、今日見た映画の雰囲気にも流されながら必死に結論をだそうとしていた。それが間違った結論だなんてそのときはこれっぽっちも思わなかったのに。
「ごめんなさい。いい人なんだけど・・・。」
それが彼女の答え。
「そうだよね」
なんてバカな答えを返して。
「送っていくよ」
なんて言うのが精一杯の強がりだった。彼女を家まで送っていって、そのままバイト先に行きちょうど勤務が終わった先輩を捕まえてむりやり朝まで飲みに行った。
初めてのデートで、初めて女の子に告白して、初めて振られた。しかも好きでもなかった女の子に。これが僕の初デートにまつわる映画「耳をすませば」の想い出。恋愛映画を見た後に告白しちゃだめって教訓を残して。
その五年後ぐらいに二人は再会して、また飲みに行った時の話しはまた別の時にでも。
posted by kbb at 00:00
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