おはようございます。昨日は久しぶりに残業もなく、早く帰れる日なのに誰とも約束がない。よく飲みに行くやつの顔を頭に思い浮かべてみたけどそいつらが今日はだめだと以前言っていたのをすぐに思い出した。他に誰か誘えそうなやつはいないか、こんな日はかわいい女の子がいいなぁ、と思いつつそんなのがいたらすでに誘っているよな、なんて思いつつ銀座の街を歩いていたら、前から歩いてきた外国人女性とぶつかりそうになってしまった。考え事をしていてちゃんと前を見ていなかったと反省して謝ろうと顔を向けたところですっごい素敵な香りに気付いた。どうやらその女性の匂いらしい。石鹸のような、それでいて遠くから匂ってくる花のような柔らかい香りがした。人はこんな気持ちのときにふと出会ったこういう香りのせいで女性についていってしまうんだろうなぁ、って思った。
その女性の香りをうまく言葉で説明できないのがもどかしい。言葉で説明できない、ということは誰かに伝えることができないということなのだから。飲みながら友人とこの話になったときにこういう匂いだったと伝えることもできない。男をだますにはこの香りがいいと、女の子に伝えることもできない。
そんな香りをあれとこれと混ぜた香りと的確に説明できそうな女性がでてくる"匂いの収集"が収められている短編集「まぶた」です。ある一点に狂気的につきすすむ、そんな人たちがいっぱいでてくる小川洋子の特長がよくでている作品集のような気がしました。そのおかげでか、背筋がぞくぞくっとするような恐い作品が多く収められています。表紙の女の子もなんだか角川ホラー文庫を見ているようですしね。
以前「シュガータイム」で小川洋子の作品はやっぱり好きかも、って書いたけど、それは恋愛感情とは全然種類の違う「好き」なのである。それよりも五年ぶりぐらい音沙汰のなかった友人と飲みに行くことになり、最初は緊張しながら乾杯をして近況などを語り合っているのだけど、そのうちにだんだんと五年前のことを思い出しながら杯を重ねていくうちに背景や詳細をなんにも説明していないのに、自分や相手の現在の話題にちゃんとついていける。そんなことを飲み終わったあとに気付く。そんなふうに飲める相手に抱くような気持ちを小川洋子に感じていたのでした。要は楽しかったってことですね。







