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2009年02月22日

余白の愛-小川洋子

「余白の愛」 小川洋子

余白の愛こんにちは。

先日、待ち合わせをしていてしばらくハチ公前にいたのですけど、待ち合わせをしている男女の会話を聞いていて思ったことがありました。

男) 待った!?
女) 大丈夫だよ。

っていう会話がそこそこで聞こえたのですけど、これって以前は

男) 待った!?
女) 全然。

っていう会話だと思ったのですけどいかがでしょうか?上のは(待ったけど怒ってないから)大丈夫だよ。っていう答えなのに対して下のは全然(待ってないよ)。ってことになると思うのですけど、どうでしょうか?

だから何って言われると困るのですけど、全然待っていないよ、って相手を気遣う言葉が減っているのが寂しいなって思っただけなんですけどね。

さて、小川洋子、「余白の愛」です。
小川洋子は何かについて偏執的に書かせたらピカ一です。この作品も指に対して病的に好きなことを表現したらこんな作品になるっていう典型かもしれないですね。

突発性難聴になったわたし。以前は貴族の住居だったホテルの隣に位置するF耳鼻咽喉科病院に入院していた。退院してから三日後、突発性難聴の患者ばかりを集めた座談会に出席するためそのホテルの一室に訪れた。Yはそこにいた。速記者として出席していたYの指に惹かれてしまう私。そこから私とYの交流がはじまる。

そんなお話です。小川洋子が描くものっていうのは香りや音など、すぐに消えてしまって手で掬うことができないもの。指や耳などの見ているはずなのに見たことすら記憶に残らないものなどがおおいですよね。そういえば「博士の愛した数式」は記憶がテーマでしたよね。それに「凍り付いた香り」は匂いがテーマでしたね。

この作品のテーマは指と耳と音。私の耳。ベートーベンの補聴器。Yの指。突然聞こえてくるヴァイオリンの音。全てが確実なのものでないからこそ、それを形あるものとして残したい。Yの指を通して。

冒頭のカップルの会話ですけど、そんな言葉を使っていたなんて当の本人達はまったく覚えていないでしょうね。でも、だからこそそういう一言一言を大切にしたいなぁなんて思います。酔っぱらっていつも後悔しているのはそういう言葉の使い方なんですけどね。こんなこと言ってますけど失敗してばかりです。




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posted by kbb at 16:00 | 東京 ☀ | Comment(2) | TrackBack(0) | 小川洋子

2008年04月05日

まぶた-小川洋子

「まぶた」 小川洋子

おはようございます。昨日は久しぶりに残業もなく、早く帰れる日なのに誰とも約束がない。よく飲みに行くやつの顔を頭に思い浮かべてみたけどそいつらが今日はだめだと以前言っていたのをすぐに思い出した。

他に誰か誘えそうなやつはいないか、こんな日はかわいい女の子がいいなぁ、と思いつつそんなのがいたらすでに誘っているよな、なんて思いつつ銀座の街を歩いていたら、前から歩いてきた外国人女性とぶつかりそうになってしまった。考え事をしていてちゃんと前を見ていなかったと反省して謝ろうと顔を向けたところですっごい素敵な香りに気付いた。どうやらその女性の匂いらしい。石鹸のような、それでいて遠くから匂ってくる花のような柔らかい香りがした。人はこんな気持ちのときにふと出会ったこういう香りのせいで女性についていってしまうんだろうなぁ、って思った。

その女性の香りをうまく言葉で説明できないのがもどかしい。言葉で説明できない、ということは誰かに伝えることができないということなのだから。飲みながら友人とこの話になったときにこういう匂いだったと伝えることもできない。男をだますにはこの香りがいいと、女の子に伝えることもできない。

そんな香りをあれとこれと混ぜた香りと的確に説明できそうな女性がでてくる"匂いの収集"が収められている短編集「まぶた」です。ある一点に狂気的につきすすむ、そんな人たちがいっぱいでてくる小川洋子の特長がよくでている作品集のような気がしました。そのおかげでか、背筋がぞくぞくっとするような恐い作品が多く収められています。表紙の女の子もなんだか角川ホラー文庫を見ているようですしね。

以前「シュガータイム」で小川洋子の作品はやっぱり好きかも、って書いたけど、それは恋愛感情とは全然種類の違う「好き」なのである。それよりも五年ぶりぐらい音沙汰のなかった友人と飲みに行くことになり、最初は緊張しながら乾杯をして近況などを語り合っているのだけど、そのうちにだんだんと五年前のことを思い出しながら杯を重ねていくうちに背景や詳細をなんにも説明していないのに、自分や相手の現在の話題にちゃんとついていける。そんなことを飲み終わったあとに気付く。そんなふうに飲める相手に抱くような気持ちを小川洋子に感じていたのでした。要は楽しかったってことですね。




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posted by kbb at 09:03 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 小川洋子

2008年03月25日

シュガータイム-小川洋子

「シュガータイム」 小川洋子

シュガータイム「 東芝の体重体組成計が欲しい! 」とブログに書くと、抽選でプレゼントという企画をブログ村でやっているので、とりあえず書いてみました。

目の前の利益と将来の不利益を天秤にかけて目の前の利益をとるという、経済学の考え方。だからせっかちな人ほど太る。

と、なんかの新書に書いてあると、どっかの書評で読みました。思わず膝を打ってしまうほど、自分にぴったりだなぁ、と感慨深く感じてしまいました。経済学の理論が自分にぴったりなんて、なんだか誰かに操られているようでいやですね。自分のせっかちな性格と旺盛な食欲がこんなところでリンクしているだ、なんてお前にはダイエットはムリだって言われているようでなんだかつらいですね。ダイエットなんて、禁煙と一緒で始めるのは簡単なんですけど、続けるのが難しいんですよね。

まぁ、そんなことはさておき、小川洋子の「シュガータイム」です。久しぶりの小川洋子でしたが、あぁそういえばこんな雰囲気だったと思いだし、思いだし読んでいました。

物語は"わたし"の日記からはじまる。

四月二十二日(火)
フレンチトースト四切れ(シナモンをかけすぎた)
セロリのサラダ 醤油ドレッシング
ほうれん草のココット
ハーブティー(口に残ったシナモンの香りを消すために)
草加せんべい五枚(ハーブの匂いを消すために)
納豆と胡麻のスパゲッティー
ドーナツ七個
キムチ百五十グラムぐらい(ドーナツが甘すぎて胸焼けしたから)
フランスパン一本(口の中がひりひりしたから)
ハヤシライス二杯
フライドチキン八本
ソルトクラッカー一箱
あんずジャム一口


ある日からはじまった、異常な食欲。常に食べ物のことが頭の中から離れなくなる。近くのスーパーマーケットに売られているショーケースの中の熊の掌に興奮しながら自分の身の丈にあった食料を買い込んでいく。

彼女をとりまく恋人吉田君の奇妙な行動と、弟の奇妙な病気。彼女の異常な食欲がどこからやってきたのかなんて理由をさぐることなんかせずにいつのまにかそれを受け入れてしまう。むしろ、自分にもそういうことがあったと思わされる。

そうそう、そうやって食べ物がなくなっていくのを快感に感じてしまった時があった。コンビニで袋いっぱいの食料を買い込んで一晩で消費したこともあった。なんて思い出させてくれる。結局排泄されてしまうものなのに、そうやってエネルギーをためないとやっていけないことがあった。エネルギーをためたところでそれを使う何かなんてなかったのに。

それがいつ終わるのか。作品では描かれていない。それが終わるときが子供から大人になる瞬間なのか。それともそんなのはいつまでも終わることがないのか。そうやって自分を受け入れていかなければならないのか。そんなことを感じさせてくれる。

なんともいえない、すてきな作品でした。この雰囲気好きかも、なんて思いながらいつもより時間をかけてゆっくりと一冊の本を読みました。いつまでも"わたし"の生活を見ていたいなんて思ってしまう。

小川洋子、やっぱり好きかも。




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posted by kbb at 02:12 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 小川洋子

2006年04月03日

妊娠カレンダー-小川洋子

「妊娠カレンダー」 小川洋子

妊娠カレンダーおはようございます。今度アルバイトをはじめました。それがまた、夕方から朝の5時までという普通の人間とは真逆の生活をするはめにおちいりました。たった二ヶ月のことだし、まだまだ若い(ここ重要ですよ。テストにだしますよー)ので大丈夫だと思いますけど、こういう生活をすると人間は昼間活動して、夜寝るようにちゃんとできているんだなって実感できますね。

さて、そんな普通じゃない状態で読むとすんなりと頭にはいってきそうな作品。小川洋子の「妊娠カレンダー」です。「博士の愛した数式」を初めて読んで、この人にはまるぞ!って思って(結局思っただけで終わってしまいましたが)小川洋子の作品リストをどっかで見て、次はこれを買おうと思って早幾歳月。やっと手に入れて読みました。小川洋子の芥川賞受賞作です。

やっぱりそのときの直感は外れていなかったと実感できる本でしたね。表題作"妊娠カレンダー"と"ドミトリイ"、"夕暮れの給食室と雨のプール"の三作が収められています。

出産間近の姉に胎児に悪いことを知りつつ農薬がいっぱい塗られたグレープフルーツを使ったジャムをつくり、姉が食べることを止めない妹のでてくる"妊娠カレンダー"

不思議な管理人がいる不思議な学生寮が舞台の"ドミトリイ"

給食室をながめ、物思いに耽る男との出会いを描いた"夕暮れの給食室と雨のプール”

どれもこれもよかったけれどやっぱり”妊娠カレンダー"がよかったですね。"ドミトリイ"はちょっとこわくて、どきどきしちゃいました。この学生寮は結局・・・なんですかね。でもあの管理人さんにあんなことできるとは思えないのだけれど・・・。給食室の話しはちょっと物足りなかったですね。「続きはありません」というセリフが予想できてしまったのだもの。ここで一つなんかあればすごい好きな作品になっていたかもしれませんね。

友人に、というか、昔働いていいたところの店長さんが、女性なんですけど、この人不倫のあげくに、子供二人を産んで未婚の母になっているんですね。養育費も認知も要求していないという、なんというかすごいというか、よくやるわーって感じなんですけど、この人は喫煙者なんです。彼女は最初の子を産んだ時に病院までお見舞いに行ったのですけど、そのときの話しがすごい印象に残っています。

子供が出てきたときに、最初に手足の指の本数を確認したわ。全部揃っていて、ほんとによかったとほっとしたの。

なんていうか、母親って感じでしたね。母親はなるものじゃない。作られるものだなんてよく言いますけどほんとにそれを実感しました。父親にはなるしかないんでしょうがね。そのときの産婦人科の病棟も結構不思議な空間でしたね。女性しかいなくて、なんというか女の匂いってのが充満していて。あぁ、ここでは男は生活することはできないんだな。外からやってきて、また外に出ていくことしか男にはできないんだなって思ってしまいました。今日の結論は、やっぱり母親はすごいってことでいいですよね。


posted by kbb at 06:13 | 東京 🌁 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小川洋子

2006年03月20日

薬指の標本-小川洋子

「薬指の標本」 小川洋子

薬指の標本おはようございます。昨日は風が強かったですね。渋谷あたりに行けばスカートの生地が薄くなってきているので素敵な光景が見られたかもしれませんね。でも昨日は寒かったからまだまだかしらね。

朝からお馬鹿なことを言いました。すいません。タバコは吸うけどね。

・・・・・・

えっと、気を取り直しまして。「薬指の標本」。読みました。「博士の愛した数式」の小川洋子の作品です。"薬指の標本"と"六角形の小部屋"の二作品が収録されています。

二つともなんだか雰囲気の似ている作品でしたね。「必要としている人には目をつぶっていてもたどり着ける」標本室と「必要な人はおのずとたどりつく」小部屋。いつでもどんな人でも受け入れてくれる存在。象徴としての標本と六角形の小部屋。なんだか読みながら、村上春樹の作品にでてくる、地下の図書館の存在となんだか似ているなぁなんて思っちゃいました。どちらもいつのまにか絡め取られて、はまると抜け出せなくなりますしね。

"薬指の標本"では標本と同じくらい大切な存在として、靴がでてきます。弟子丸氏がプレゼントしてくれた「わたし」の足にぴったりの靴。それは彼女の足に吸い付けられるようにはまっている。しかし、ずっと履いていると足が侵されていく。

なんだかここを読みながら誰かが言った言葉を思い出していた。ほんとのモテル男は女の子の指輪のサイズと靴のサイズは見ただけでわかるんだって。なんだかその言葉を信じているかのように、仲がよくなった女の子の指輪と靴のサイズを当てようとがんばっているのだけれど、これがなかなか難しいのよね。でも、これがモテル必須条件だとしたら、靴屋さんと指輪屋さんは半分の条件は満たしているわけだから、そこに就職すればモテルようになるのかしら。

はぁ。小川洋子を読みながらこんなこと考えているの自分だけだろうな。すごいきれいなお話だし、いろいろと考えちゃいました。自分にとって標本にしたいよう存在はなにかしら。六角形の小部屋のような存在はなにかしら。とかね。でも全然思い付かなかったな。

posted by kbb at 10:15 | 東京 ☀ | Comment(4) | TrackBack(3) | 小川洋子

2006年01月08日

博士の愛した数式-小川洋子

「博士の愛した数式」 小川洋子

博士の愛した数式今度公開される映画「博士の愛した数式」(映画公式ページ)を見に行く話しで友人と盛り上がっています。今度こそ思いっきり泣くぞというつもりで見に行くのですけど、その前に忘れてしまっているようなあらすじを思い出すために再読してみました。

いやぁいいですねぇ。日本酒を飲んでいたからかわからないけれど最初の10ページぐらいから泣いてましたよ。本を読みながらこんなに泣くのは久しぶりです。ページに涙がボトボト落ちるのも気にせず次のページ、次のページへと読み進めていきました。今回読んで感じたのはこの作品の中には人の"悪意"ってのがまったくないんだなぁってところですね。すべての人が誰かのことを想い、善意によってすべての関係性が説明できそうな気がします。それと途中で気付いたのですけど、地の文が過去形で書かれているんですね。それがエンディングを想像させてくれて、いい感じに積み重なっていくのが素晴らしい。小川洋子さんの文章力に感心しきりでした。以前読んだ「凍りついた香り」とはエライ違いだ。それに誰もが誰かを愛情に満ちたまなざしで見ている。博士は実の父親以上に父親的だし、母親は実の母親以上に母親的だし、子供は実の子供以上に子供的だ。

最初に読んだときはまだ話題にもなっていなかったころ、全然知らなくて本屋さんで並んでいるのを見て、タイトルに数式って入ってるだけで買った本だった。家政婦が博士に恋をして云々みたいなことを予想、期待して読んでいた。結局それはでてこないけれど、喜びに満ちあふれた裏切りを感じさせてくれた。

それにしても、自分の大好きな本を紹介する難しさを改めて感じています。作品の見せるちょっとした表情ですら愛おしいのだもの。それを説明するのは難しいですね。

これをうまく映画化できているのだろうか、と不安になっている。ちょっとした表現で泣いている自分を読みながら発見してしまい、これを映画だとどう表現するんだ?なんて思ったり、過去形であらわされた地の文はどうするんだろう、とか悪意を感じさせないことは映像で可能なのかしら?とか、博士が数学を考えているときに空中の一点を見つめ続ける演技をただ呆けているようにしか見えなかったら失望してしまうし。でもその点は「半落ち」の寺尾聰なのだから大丈夫って安心感はあるけどね。まぁなんにしろ楽しみです。今日ちょっと調べてみて知ったのですけど寺尾聰って高校が僕と一緒なのね。親近感が一気に湧いてしまいました。



posted by kbb at 14:19 | Comment(12) | TrackBack(29) | 小川洋子

2005年12月27日

凍りついた香り-小川洋子

「凍りついた香り」 小川洋子

凍りついた香り.jpg「博士の愛した数式」の小川洋子の小説。「博士の〜」ではおもいっきり泣かせてもらったので楽しみに読み始める。調香師の弘之が恋人涼子のために香水を完成させた次の日に遺書もなく兆候もなかったのに自殺してしまい、涼子と弘之の弟、彰の二人でその理由を探していくというストーリー。弘之は経歴や特技など弘之自身のすべてを偽り調香師となり、なにも明かさず涼子とつきあっていた。突然恋人を亡くし、しかもその経歴すべてが偽りであったと知り涼子はわけがわからなくなるが、自殺の理由を突き止めるために行動をはじめる。「博士の〜」と同じように、この小説でも「数学」と「記憶」が大きな鍵となっていく。

裏表紙のあらすじには謎解きのストーリーと紹介されているのに、結局最後までなんで死んだのかの説明はまったくなく、イメージ的な言葉を連ねていて、文章は読みやすくキレイな情景を浮かべることができるのだけれどすっきりしなかった。謎解きが始まるなんて書いておいて謎を残すなんて・・・。期待して読んだ分ショックが大きかった。数式の美しさについての描写や調香師が匂いを表現する言葉なんてのは興味深かったんだけどそれだけだった。

でもなんだか他のひとの書評ブログとかみてるとべた褒めなんだけどこれって僕が読めてないだけなのかしら・・・。なんだか不安になるわ。

これを書きながら気付いたのだけれど、この小説のヒロインの名前って昔つきあってた彼女の名前と同じだったんだ・・・。なんで読んでる途中に思い出せなかったのだろうか・・・。なんてヒドイ男なんでしょう。



posted by kbb at 04:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小川洋子

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